レンタカーと違ってクルマを一定期間「占有」できるメリットは大きい
他社のサービスはいずれも新車がベース。途中でやめられたらコスト計算ができないので、期間が3年、5年などと決められている。リース会社のサービスの中には、何と9年というプランまで存在する。途中解約も可能だが、場合によっては高額な違約金を支払わなければならない。
整備費、車検代、税金、任意保険まで全部ワンパッケージになっている(サービスによっては整備、任意保険が別というものもある)という簡単さはあるが、必要に応じて乗るというサブスクのメリットは事実上なく、ユーザーにクルマを買わせるのと本質的には何も変わらない。その点、Hondaマンスリーオーナーは唯一の“正真正銘のサブスク”と言える。
ハードウェアの価格と維持費の両方が高価なクルマのサブスクでそんな自由度の高いサービスを設計するのは、さぞや大変だったことであろう。普通にコストを積み上げていくやり方で採算を取るには、最低年限縛りをかけざるをえない。
それに対してHondaマンスリーオーナーは最初に目標を設定して、それを実現させる方法を考えるという、クルマの開発手法と同じアプローチで作られている。
顧客のニーズが断然高い月額定額制と低価格の2要素を満たすことを絶対条件とし、その実現のためには「新車でなく中古車を使う」「拠点は正規中古車ディーラー」「保険はレンタカー向けのものを流用」……と工夫を凝らしたアプローチでなければ、このサービスは生まれなかっただろう。
最近、メーカー系のサブスクが増えているのは、新車需要の先細りをカバーするための手段にしたいという思惑があるからだ。ゆえに、何はなくともまずは新車ありきになる。ホンダとしても、本音では新車販売に貢献する新車サブスクをやりたいのは山々だったろう。その気持ちをぐっと抑え、マーケットイン(顧客需要を見てモノやサービスを作る)に徹したのは大したものである。