こういう自由度の高いサブスクサービスの出現は、既存ユーザーの保有→使用への置き換えだけでなく、新規需要の創出効果についても期待が持てる。その筆頭は、クルマ離れの流れがすっかり定着した感のある若年ユーザーへのアピールだ。
若年ユーザーがクルマを持たなくなってきたのは、言うまでもなくクルマに大金を投ずるのはもったいないという意識が強いからだ。
もちろんクルマが生活必需品であるという人はクルマを買うケースも多いのだが、最近は地方都市であっても市心部に近いところに住み、移動は公共交通機関を使い、クルマは持たないというライフスタイルの人も増えている。どうしてもクルマを使わなければいけないときはレンタカーやカーシェアで事足りるという考え方だ。
そんな若年層に対して、合わなければすぐやめてもいいというHondaマンスリーオーナーのようなサービスデザインは強い訴求力を持つ可能性がある。自宅に駐車スペースがあったり、最近増加中である敷金礼金なし、月単位で借りられる駐車場が近くにあるユーザーであれば、ちょっと数か月試してみようかと思わせるに十分な価格設定だ。
そのお試しの結果、どういう印象を持つかは人それぞれであろうが、ひとつ言えるのは、利用者はレンタカーやカーシェアのような短時間ないし日単位での借用では得られない体験ができるということだ。
もともとクルマを保有することの最大のメリットは、暇といくばくかのお金さえあれば24時間、自分が行きたいところに自由に行くことができるようになること。混雑期だろうが真夜中だろうが、予約状況や拠点の営業時間を気にする必要はまったくない。
レンタカーやカーシェアはどうしても必要というときに使うものだが、サブスクはそれだけでなく、急にどこか遠くへ旅してみたい気分になった時にも燃料代だけで出かけられる。この自由さは、1台のクルマを“占有”してみなければわからない。
その体験をしたうえでなお、クルマでどこかへ行きたくなったりはしないし、予約がいっぱいで借りられないときは使わなければいいと考えるユーザーもいるだろう。それはそれでいい。移動の自由というものをまずは体験してもらうにはどうしたらいいかということに、自動車メーカーはずっと頭を痛めてきた。Hondaマンスリーオーナーのような解約自由のサブスクは、その思わぬソリューション足り得る可能性を秘めている。