◆感度と特異度がともに高ければよいが……
検査の精度をあらわすものとして、「感度」と「特異度」の概念がある。
感度は、感染している人にその検査を実施したら、どれだけの割合が“陽性”と判定されるか。特異度は、感染していない人にその検査をしたら、どれだけの割合が“陰性”と判定されるか──を表すものだ。
感度や特異度は、検査ごとの固有の精度を表す数値だ。もし感度100%、特異度100%の検査があれば理想的だが、実際にはそんな検査はない。
たとえば、PCR検査では、まだ確立された数値とは言えないが、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会の『新型コロナウイルス感染症診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き(2020年3月11日公開)』によれば、感度は30~70%程度、特異度は99%以上と推定されている。
感度と特異度は、こちらを立てればあちらが立たずという、トレードオフの関係にある。たとえば、感度を上げようとして、判定基準を緩めて陽性を出やすくすれば、感染していない人についても陽性の判定が多くなり、特異度が下がってしまう。
つまり、検査の精度をみるうえでは、感度と特異度のバランスをいかにとるかがポイントとなる。
◆判定結果はどれだけ信用できるのか?
感度や特異度は、検査法の精度を表す数値だ。しかし、検査を受ける立場からみると、これらの数値には、あまり意味がない。そもそも自分が感染しているかどうかが分かっているのなら、検査を受ける必要はないからだ。
検査を受ける人がいちばん気にするのは、判定結果はどれだけ信用できるのかということだろう。
陽性の判定が出たときに、本当に感染している割合は「陽性的中率」といわれる。逆に、陰性の判定が出たときに、本当に感染していない割合は「陰性的中率」といわれる。検査を受ける人にとっては、この陽性的中率や陰性的中率が重要となるはずだ。
ただ、残念なことに、陽性的中率や陰性的中率は、検査固有の数値ではなく、その社会の感染者の割合によって左右されてしまう。そのことを、次のモデルでみてみよう。