感染者数の増加は「陽性的中率」を上げるが「陰性的中率」は下がってしまう

感染者数の増加は「陽性的中率」を上げるが「陰性的中率」は下がってしまう

◆偽陰性の増加と感染拡大の「負のスパイラル」

 では次に、感染が拡大して住民のうち20%の人が感染している状況となったらどうなるか。それをまとめたのが、(表2)だ。感染者の増加により、陽性率は、14.8%に上昇している。

 陽性的中率は95%まで上がるが、その一方で、陰性的中率は93%まで下がってしまう。つまり、陰性の判定結果が出た場合に、じつは感染している偽陰性のケースが増えてしまうのだ。

 これは、どういうことを意味するのだろうか?

 検査で陰性と判定されたが、じつは感染している偽陰性の人が何人もいたとしよう。この人たちが外出の自粛をせずに、人混みに入っていけば、周囲に感染を拡大させてしまう。

 すると、社会全体の感染者の割合は高まる。感染者の割合が高まると、陰性的中率はさらに下がる。つまり、偽陰性の割合が上がる。こうして増加した偽陰性の人が、さらに感染を拡大させていき……。このように、偽陰性の人の増加と、感染拡大の「負のスパイラル」が発生する恐れがあるのだ。

◆判定結果を受けてどのように行動すべきか

 では、負のスパイラルを避けるためには、どうすればよいだろうか?

 繰り返しになるが、どんな検査にも100%の精度はない。検査を受けた人が、このことをよく理解せずに、判定結果を鵜呑みにして行動することは避けるべきだろう。

 たとえ陰性の判定結果が出た場合でも、「感染していない可能性が高い」ぐらいに捉え、「絶対に感染していない」とは考えないようにする。特に、今回の新型コロナは、感染拡大が始まってからまだ日が浅く、疫学や病理学などの研究が進行している段階だ。こうした中では、検査結果の過信は、感染の収束に弊害をもたらす可能性がある。

 今後、検査の実施数を増やすときには、検査を受けた人が判定結果に応じてどのように行動するかが重要なポイントになるだろう。検査の拡充を通じて、社会全体の感染状況を明らかにしていくとともに、結果の見方の理解を広めていくことも、感染の収束のために必要ではないだろうか。

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