国際情報

新型コロナ 声高な「中国責任論」には首を傾げざるを得ない

中国責任論が声高に叫ばれているが…(写真;アフロ)

 コロナ問題は世界経済や米大統領選の行く末とも密接にリンクしており、その着地点がどこになるのか予断を許さない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 アメリカの中国叩きが凄まじい。もちろん5月17日現在で新型コロナウイルスの感染者は約464万人、亡くなった人も31万人を超えるなど被害は甚大だ。世界経済へのダメージも深刻で、各地で失業者があふれている。こうした被害をもたらした感染の根源が武漢市にあるとなれば、中国に対する厳しい目が向けられるのも仕方のないことだろう。

 だが、だからといって経済的損失を中国に賠償させようという、いわゆる「中国責任論」が一部で声高に叫ばれるていることには首を傾げざるを得ない。

 4月下旬には米中西部ミズーリ州が、中国政府や共産党などを相手に損害賠償を求める訴訟を米国で起こし、そうした流れは英、豪、独、仏、伊、印などに広がっているという報道をよく目にする。だが、詳細に見てみると、アメリカ以外はメディアやシンクタンクが呼びかけたもの──オーストラリアなどが真相究明を求めた動きはある──で、本来なら国の動きとは一線を引いて扱うべきものだということが分かる。

 そのアメリカでは12日、米上院司法委員会のグラハム委員長が新型コロナウイルスに関する「責任追及法」に言及した。これは、いかなる国の裁判所も他国政府が感染防止・抑制面で講じた主権行為に対して司法管轄権を全く有しないという「主権免除」の原則を打ち消すための動きだと解釈される。

 感染が起きた時点で存在しなかった法律で中国を裁くということ自体に違和感を覚える話だが、それが可能ならばアメリカの新型インフルエンザでの対応が訴訟の対象になっても不思議ではないはずだ。エイズもO-157も同じことだ。感染症ではないが、人為的なミスで世界の金融システムに深刻なダメージをもたらしたリーマンショック・世界金融危機でのアメリカの責任も俎上に乗せられるべきだろう。そうでなければ不公平だ。

 しかも、この話題の恐ろしいところは、今後どこでどんな感染症が始まるのか、その発生のメカニズムもきちんと解明されていないのに、突然当たりくじを引いた国が恐ろしい賠償金の対象にさせられるかもしれないということだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン