新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、新作ドラマは放送延期になっているものがほとんど。そんななか、今にわかに注目を集めているのが「家政婦」「家政夫」もののドラマだ。その人気の秘密についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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そんなわけで、元気よくシーズン4がスタートした『家政夫のミタゾノ』の三田園薫(松岡昌宏)。松岡の女装にも、スカートを横に広げてダチョウにごとく疾走するミタゾノダッシュにもすっかり慣れ親しんだものよと思った矢先、ミタゾノもリモートワークなり、現在は傑作選を放送中。外出自粛で誰とも話していないせいか、「痛み入ります」というミタゾノの口癖にもうっかり「どういたしまして」と返事をしそうな勢いである。
それにしても今シーズンは「家政婦」「家政夫」関連のドラマが多い。ミタゾノをはじめ、テレビ東京では巨大なネコ(松重豊)が家政婦としてせっせと働くミニドラマ『きょうの猫村さん』が放送中だし、TBS新火曜ドラマ枠では仕事一筋で家事も恋愛の苦手という女性(多部未華子)のところにおじさん家政夫(大森南朋)がやってきて家事万端を担当するという『私の家政夫ナギサさん』が放送待機中である。5月7日からはAXNミステリーチャンネルで、こうした家政婦ドラマの元祖ともいえる市原悦子主演の『家政婦は見た!』シリーズの一挙放送もあり、ファンを喜ばせた。
なんでまた、こんなにも家政婦・家政夫ドラマが人気なのか? それはさまざまなドラマの要素を自在に盛り込めるからだ。家政婦という他人が入ることで見えてくる家族の裏側。基本的な構図はどの作品にも共通しているが、それが時にはハートフルなホームドラマになったり、スキャンダラスな愛憎劇になったり、驚くべきサスペンスにもなる。
『家政婦は見た!』は、もともと松本清張の原作。社会の暗部に鋭く切り込む作家が生み出した家政婦・秋子(市原)の目を通して視聴者にセレブ一族の裏側のぞき見させ、悪事を暴く。秋子の名セリフは「まあ」と「あらやだ」だった。このシリーズは当時の世相を反映したサブタイトルが秀逸で1983年の第一弾「夫婦の秘密“焦げた”!」から始まって、「華麗な一族の怪しい秘密 財テクゲームの危険な落とし穴」「ふるさと創生資金1億円で色と欲の温泉ブーム 町長一族の乱れた秘密」なんてのもあり、野次馬心を大いに誘うものばかり。