なかでもスイートピーSの鮮烈な勝ち方で注目を集めているのがデゼル。2年前の出資者決定直後に骨折が判明、「非常に珍しい症例で、競走馬としての今後の見通しが立てられない」(社台サラブレッドクラブHP)といったん出資契約が不成立になりながら、その後回復して12月に再募集された過去を持つ。昨年8月に入厩したものの11月には山元トレセンに放牧に出され、再入厩したのは今年に入ってからで、この3月にデビューしたばかりだ。
一度募集停止になりながらクラシックの舞台に立つというのは、それだけでも快挙。羨ましいという以上に、再募集に応じた会員を素直に尊敬し、立ち直った馬を応援したいと思う。フランスオークス馬の産駒といえば、3年前に同じ勝負服でゴールを駆け抜けたソウルスターリングと同じだ。
6分の2という抽選をくぐり抜けて出走にこぎつけたリリーピュアハートも不気味。青葉賞を勝ったヴァンキッシュランの全妹で、出走馬中ただ1頭東京の2400mを経験済みで、しかも勝っている。相手はいきなり強くなるが、隣の枠にいる僚馬がスタート前の不安を和らげてくれるだろう。募集時のカタログには「困難をひとつひとつ乗り越え、その名を歴史に刻んでくれることでしょう」とある。
桜花賞で推したデアリングタクトは、むしろオークス向きという印象もある。桜花賞組は平成以降の31年で23勝2着22回と強い。しかし桜花賞馬が出走しなかったとはいえ、令和元年の1着は2000mの忘れな草賞、2着はスイートピーSの勝ち馬だった。桜花賞の1番人気馬が出走しない今回も、平成までのデータをリセットして「3戦目」と「6分の2の幸運」を買う。
●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。