国内

医療機関が怖れる「6月危機」 夏のボーナス払えない医院も

来院数が激減し6月が怖い(写真はイメージ)

来院数が激減した影響で6月が怖い(写真はイメージ)

 5月1日に日本医師会と四病院団体協議会(四病協)が加藤勝信厚生労働相に提出した「新型コロナウイルス感染症における診療体制に関する要望書」は、コロナ治療対策についてだけでなく、日本の医療を支える存在が崩壊する危機を訴えたものだった。その訴えによれば、コロナ禍で患者数が激減した4月の診療報酬の支払時期にあたる6月は大幅な収入減となり、日本全国の医療機関で、そこが大病院でも町医者でも、すべてが経営危機を迎える可能性がある。コロナ治療の有無に関わりなくほぼすべての医療機関が経済的危機に直面しているというのだ。この困難な時期、少しでも出費を抑えたい小さな医療機関のもとに、高額なアルコール消毒液が届いた。ライターの宮添優氏が、苦境にありながらそれを訴えづらい医師たちの実態についてレポートする。

 * * *
「多くの医療従事者が、まさに不退転の決意で新型コロナウイルスと戦っている。同じ医師として誇らしい気持ちでいっぱい、私も医療従事者の端くれとして何かしらお手伝いしたい、協力したいという思いはあるのですが……」

 福岡県内のクリニック院長・澤田義彦さん(仮名・40代)が漏らすのは、自身が医師であるにもかかわらず、新型コロナウイルスに関する医療に全く寄与できていないという喪失感、そして何より「生活が立ち行かなくなってしまう」危機感だ。澤田さんが経営するのは、内科と整形外科の外来診療のみを行う小さな「町医者」。3月の下旬ごろから患者数はガクッと減り、4月は日に数人、5月に入っても患者数は、以前の水準の2割ほどだという。

「こういう時期ですから、患者さんにも週一だった通院を二週間に一度に、月に一度にと減らすように勧めてはいるのですが、そもそも緊急事態宣言下の自粛要請のおかげで、通院控えする患者さんが多い。感染拡大のために患者さんも苦しい思いをしているし、それが世のためだというのはその通り。ただ、私どもの生活は苦しくなる一方」(澤田さん)

 言うまでもなく医療機関は生活に必要不可欠な機関であり、当然「自粛要請」の対象には入っていない。医療機関が閉じてしまえば、持病を持った患者、急に体調を崩したり怪我をしてしまった患者は路頭に迷う。ただ、世の中の医療機関のうち、コロナ患者に対応できるような病院は、実はほんの一握り。「医者」といえば、景気や社会情勢に左右されず、高い収入が維持できる仕事、というイメージが根強い。そのためパンデミック下において、ほぼ全ての産業が大ダメージを受ける中で、医療機関だけは「儲かっているのではないか」と考える人も少なくなく、だからこそ「医療機関の救済」などとは声高に語られることもなかったのだ。

「医療機関は、商売というより社会奉仕的なイメージが強い。だから金の話は特にしづらいんですが、他の商売と同様に経営が成り立たなければその社会奉仕すらできない」(澤田さん)

 多くの医療機関は、このコロナ禍でも市民の健康や命を守るために業務を続けているが、その台所事情は真綿で首を絞められるように悪くなっている。

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト