さまざまな仕掛けが生まれた秘密を明かす本木氏
本木:山本さんにしてみれば今回は主役じゃないから、ああいう遊び心のあるシーンも伸び伸びやれたんじゃないかな。
土橋:こういうボーイズラブ的な要素もそうですが、地上波ではやりにくいことが増えましたよね。今回はWOWOWさんだからわりと振り切って書けましたけど。
本木:最近の地上波は自粛すべき制約が多いですからね。だから今回は、地上波ではできないことを思い切りやろうという想いが、根底にずっとありました。何しろ主人公からしてギャンブル依存症だし(笑い)。
土橋:辰五郎のそうしたダメ男っぷりを丸山さんが見事に表現されていましたね。ダメさと優しさが混在していて、それでいて外連味があるという、絶妙なキャスティングだと感激しました。
本木:僕はこういう、愚か者だけど憎めない男の物語が大好きなんです。ところが、この手の役柄をちゃんと演じられる役者というのは、意外と少ない。どうしてもどこかでカッコ良く見せようとしてしまい、説得力が弱まるものなんですが、丸山君はそうした欲を全部捨ててくれました。おかげで、「ああ、こういうヤツいるよな」と誰もが共感できるキャラになったと思います。
【PROFILE】
土橋章宏(どばし・あきひろ)/作家・脚本家。1969年、大阪府生まれ。関西大学工学部卒。2011年「超高速!参勤交代」で第37回城戸賞受賞。2013年に小説『超高速!参勤交代』で作家デビュー。2014年公開の同名映画で第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。著書には映像化作品多数。
本木克英(もとき・かつひで)/映画監督。1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。松竹に入社後、1998年に監督デビュー作『てなもんや商社』で第18回藤本賞新人賞受賞。2014年『超高速!参勤交代』、2018年『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。2017年よりフリー。
●取材・構成/友清 哲
※週刊ポスト2020年6月12・19日号