旅客実績もあり健闘している茨城空港だが、課題も多い(時事通信フォト)
◆ポスト・コロナ時代に問われる茨城空港の存在感
スッタモンダがあった愛称問題もひと段落。最大の課題は今後の茨城空港がどれだけ存在感を放つことができるかだ。国交省の資料によると国管理25空港の一つである百里飛行場(茨城空港)の平成30年度の収支は次の通りだ。
【航空系事業】営業損益/-1億9600万円 経常損益/-1億6500万円
【非航空系事業】営業利益/1700万円 経常利益/400万円
【非航空系事業+航空系事業】営業損益 /-1億7900万円 経常損益/-1億6100万円
【EBITDA(実質的な利益水準を示す指標)】航空系事業+非航空系事業/8500万円
航空系事業と非航空系事業を合わせた収支(経常損益)は、国管理空港25のうち15空港が赤字となっている。茨城空港もその一つだが、赤字額は3番目に少ない。各空港が1年間の営業を通じて得られるキャッシュフロー(実質的な利益水準)を示す指標「EBITDA」は、8500万円の黒字となっている。
旅客実績(東京航空局調べ)は平成22年度の20万3070人が26年度に53万8215人と50万人を超え、令和元年度は77万6002人と過去最多を記録した。2019年の1年間の数字では約82万2000人と年間80万人を突破。これは全国85空港中37番目の乗降客数だ。収支、旅客実績ともに地方空港の中では健闘していると言っていいだろう。
自衛隊との共用空港ということで戦闘機マニアにも人気で、無料の駐車場、ターミナルビルからの眺望、土産物購入など若者のデートスポットとしても知られている。ドラマなどのロケ地としても利用されている。飛行機に乗らない人にとっても楽しめる空港なのだ。非航空系事業の黒字化を含め、「地方空港の成功モデル」との評価もある。
問題はコロナ禍で航空需要が大きく減少した中で、今後インバウンドを含めどれだけ旅客実績を回復させられるかだ。それには空港自身の利便性向上、機能充実、アクセス改善だけでは不十分。茨城の豊富な観光資源、農産物・海産物資源、つくばに代表される研究拠点、日本有数の実績を誇るロケ地としての魅力など、茨城のパワー・魅力・財産を内外に強烈に発信することで、国内観光客、ビジネス客に加え、「茨城空港経由東京行き」ではなく、茨城訪問・滞在を目的とするインバウンドをどれだけ増やせるかがポイントになる。
「Ibaraki International Airport」の愛称と「Ibaraki」の魅力をどこまで浸透させることができるか──。県の情報発信力が大いに問われることになる。