こうしたビジネスをしている人間であれば、色々反論したいことはあるだろうが、こちらが聞きたいのは「だったらお弟子さんがどれだけ金持ちになったか具体的な数字を挙げてください。参加人数における比率、これまでの入退会者数の推移とともに」ということだ。
「個人情報ガー!」「守秘義務ガー!」などと言ってくるだろうが、本当に実績があるのならば喜んで開示するのがこの手の人々である。だからこそ自分のことは「月商1328万4238円達成!」などと書く。
長く生きてきた高齢者が陥りやすいのが、「自分はアナログ人間」という決めつけである。自称・アナログ人間からすれば、ネット上で教祖のごとく振る舞っている人々はそれだけで年齢が若かろうがキラキラとした存在に見えてしまう。
だからこそ、定年後の人生を憂えてこうした教祖様にすがり、結果毎月5980円也をお布施として支払うことになったのだ。
かくして年間7万1760円。このサロンに参加して得られたものは「互助会」のごとき120人のツイッターフォロワーのみ……。
嗚呼……、だったら妻と2人でパックの温泉旅行に3回行けたのでは……。そちらの方が有益だったのでは……と思っても後の祭り。人生経験豊富な人であろうとも、アナログ人間はこの罠に落ちてしまう。
世の中に「おいしい話」なんてないことはネットだろうが現世だろうが同じだ。
●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。
※週刊ポスト2020年6月26日号