コロナ休業店舗向けに愛知県警中署が作成した防犯宣言ステッカー(時事通信フォト)
詐欺メールの送りつけは、かつて流行った手法ではあるが、度重なる当局やマスコミの注意喚起により、よほどニュースに疎い人でないと引っかかる人も減った。それでも、何もやらないよりはマシということで、詐欺師たちが詐欺メールを再び送り始めた、というのである。G氏によれば、同じような理由で強盗や空き巣が増え始めている、ともいう。
「特殊詐欺では、摘発から逃れるために、末端要員である現金の受け子や出し子を活用するのが常ですが、コロナの影響によって街に人が少なくなったせいで、詐欺師はどうやっても目立ちます。バンカケ(警察による職務質問)にあう危険性も高く、詐欺電話によるアポも取りづらいため、詐欺をしようと集められていた人員に仕事がなくなった。そこで何をやらせるかというと、タタキ(強盗)です。高額納税者リストなど、詐欺電話で使う予定だった名簿を参照し、金のありそうな家に押し入る。理想は空き巣でしょうが、巣篭もりする人が増え、結果的にタタキになってしまう」(G氏)
中部地方では、コロナの影響で休校になり、子供だけが残る家に強盗が押し入った、という背筋の凍るような事件が発生。関東地方でも、高齢者宅にSNSで知り合った者たちが強盗に押し入り逮捕されるなどしているが、これもまた、詐欺グループの関与が濃厚だと見られるのだ。
完全な「詐欺師」とまでは言わないまでも、グレーな方法で人を欺き巨額の利益を上げている「情報商材屋」の連中も、コロナ禍に乗じた金儲けを画策していた。SNS上で「金持ち」を自称し、情報商材屋として活動したことのある高崎龍一さん(仮名・30代)の証言。
「情報商材は基本的に楽して金が儲かる方法、という内容ですが、コロナ禍ではコロナに感染しない方法、感染しない薬、などの情報も作られ、それなりに売れました。エビデンス(証拠)? それはありませんが、世界中でコロナに関するいろんな情報が出ては消えていた中で、誰にも真実はわからない。そういう世の中は情報商材屋にとって本当に商材を売りやすい。情報を適当に繋ぎ合わせて売れば良いし、出典元も明示できる。マスク投資、コロナ用のワクチン投資という名目で金を集めた連中もいました。ワクチンの方はまだやっているようですが、マスク投資の連中はすでに逃げました。」
聞けば聞くほど卑劣極まりない、そして全く懲りることのない詐欺師たちだが、ピンチをチャンスに変えようとする、ある意味での「たくましさ」、座して死を待たないという「執着心」には、感心するやら呆れるやら……。その生命力の強さを、ポジティブな方向で発揮するだけで自身も世の中も幸せになる、ということが理解できる日はくるのだろうか。