韓国・延坪島から見た北朝鮮(AFP=時事通信フォト)

韓国・延坪島から見た北朝鮮(AFP=時事通信フォト)

◆延坪島砲撃事件/2010年11月23日

 黄海の延坪島(ヨンピョンド)近海で発生した北朝鮮軍と韓国軍による砲撃戦。2010年に入り、黄海上では南北の砲撃が繰り返されるなど緊張が高まっていた。

 2010年11月23日14時34分ごろ(日本時間同)、北朝鮮軍がNLLを越えた延坪島に向けて砲弾約170発を発射、90発が海上に落下し、80発が同島に着弾した。それに対し、韓国軍海兵隊延坪部隊は北朝鮮軍の砲台を目標に80発(約50発との報道あり)の反撃を行った。北朝鮮軍の砲撃は同日15時41分ごろに止まった。

 この時、北朝鮮空軍のミグ23戦闘機5機が哨戒飛行を実施したため。韓国空軍はF-15K戦闘機とKF-16戦闘機を4機ずつ延坪島に向けて緊急発進させた。

 この事件で韓国の海兵隊員2人と民間人2人が死亡、海兵隊員16人が重軽傷、民間人3人が軽傷を負い山火事や約70棟の家屋の火災が発生した。住民1300人には避難命令が出された。

 韓国軍は防衛準備態勢を「デフコン3」(韓国の場合、朝鮮戦争が休戦状態のため平時はデフコン4)に引き上げるのではなく、北朝鮮の工作員が侵入した場合に発令される「珍島犬(チンドッケ)1号」を発令した。

「デフコン3」の発令権限は、韓国軍ではなく米韓連合司令官にあるため、米韓連合司令官が「デフコン3」を発令するということは、“戦時”に移行することを意味する。したがって、韓国軍の作戦指揮権が米韓連合司令部に移管されることを防ぐため、「チンドッケ1号」を発令したのだ。

 韓国政府は直ちに北朝鮮を非難する声明を発表し、同月29日には李明博(イ・ミョンバク)大統領が緊急談話を発表した。北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は23日夕、韓国軍が同日の軍事演習で北朝鮮領海内に砲射撃したと主張したうえで「断固とした軍事的措置をとった」と攻撃を認める声明を発表した。

 この北朝鮮の砲撃に対して韓国軍は報復攻撃を行わなかった(対抗射撃は行った)。北朝鮮が1953年の朝鮮戦争休戦協定以降に韓国の陸上に砲弾で攻撃したのは初めてである。

 延坪島砲撃事件後の2010年12月6日、日米韓外相会談が開催され、日米韓3か国はその成果として共同声明を発出し、北朝鮮に対して砲撃事件への謝罪だけでなく、六者会合再開のためには北朝鮮が韓国との関係を改善し、非核化への具体的な措置を採ることが必要とする方針を示した。

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