ここ10年ほど、マンション市場は都心回帰トレンドを反映してきた。都心では多くの開発が行なわれて、タワーマンション等が数多く誕生した。しかし、2014年の異次元金融緩和第2弾以降に膨れ上がった局地バブルによって、都心のタワマン価格は中堅所得者が買えないレベルにまで高騰した。
それでも「通勤に便利な場所に住みたい」という流れは変わらなかった。都心で買えない中堅所得者は、湾岸や近郊エリアのタワマンを好んで購入するようになった。彼らの全員があの荒涼とした埋立地や、タワマンが林立する無機質な街並みを好んでそういう選択をしたのではなかろう。少なくとも何割かの人々は「通勤が便利だから」という理由で湾岸や近郊のタワマンを選んだはずだ。
テレワークの普及は、これから住まいを購入しようとする人々の選択肢を広げてくれる。例えば週に1日とか月に3日しか会社に行かなくてもよくなれば、会社まで片道1時間以上かかる程度の郊外に住んだとしても、さして支障がないはずだ。むしろ週に1度の「上京」が楽しみになるくらいではないか。
それでいて、広い住まいに暮らせば日常はゆったり過ごせる。専用のワークスペースも確保できるだろう。何よりも、住居費が安くなる。
湾岸や都心近郊の武蔵小杉で床面積が20坪のマンションを買えば、予算は6000万円から1億円程度。ところが、山手線から快速50分乗車圏で同じ広さのマンションを買うなら、予算5000万円でも十分に選択肢がある。中古で探せば、さらに予算は抑えられる。
都心でアクセク働きながら狭いマンションの住宅ローン返済に追われる暮らしよりも、郊外の自然環境が豊かな街で、伸びやかな日常を送る生活に魅力を感じる人は少なくないだろう。都心から郊外、準郊外へ──。コロナ後の住まい選びにはやや変化が起きる可能性が高い。
ではそういった場合に、選ばれやすい街はどこなのか?