そのきっかけはお隣・韓国で2016年に放送が始まった「PRODUCE 101」シリーズにある。「国民プロデューサー」と呼ばれる視聴者が、101人のアイドル候補の中から自分のお気に入りの練習生に投票する番組で視聴者を巻き込むシステムがハマって社会現象を巻き起こした。2018年にはAKB48グループも同番組に参加し、そこから生まれた日韓混合グループ「IZ*ONE」が現在も活動している。
昨年は吉本興業が主導して日本版となる『プロデュース101 JAPAN』が放送された。同番組から3月にデビューした男性アイドルグループ「JO1」は、デビューシングルが初週売上32.7万枚でオリコン初登場1位を獲得するなど異例の人気ぶりを見せている。
なぜこうしたオーディション番組が熱狂的な支持を得ているのか。
アイドル研究家の北川昌弘氏はその理由を「アイドルに抱く感情が、憧れから応援へと変化した」と解説する。
「昭和のテレビアイドルはそれまで高嶺の花であった映画スターに比べれば親しみやすさがポイントでしたが、それでもテレビから発信される一方通行の疑似恋愛でした。昭和でいえば松田聖子さんや小泉今日子さんなどが代表例で、彼女たちのソロで戦える強烈な魅力に自分とは違う存在として視聴者は憧れの気持ちを抱いていたんです。ですが、AKB48が打ち出した“会いに行けるアイドル”というコンセプトからアイドルが劇的に変わりました。
特にアイドルの成長過程を見せていくことで手の届かない存在から、応援したい友人のような存在に変化してきたのだと思います。ですから、優れた美貌や歌声といったアイドルの要素ももちろん大事ですが、オーディション番組を通して思いやりのある人柄や必死に努力を見ることでより感情移入できるようになった。『Nizi Project』は私の観た限りでは、ファイナルメンバーはかなりレベルが高い印象です。苦労を乗り越えてデビューしたメンバーだからこそ、新人ではありますがずっと応援していたグループのように感じられるのがウケているのでしょう」
2020年秋に正真正銘のアイドルとしてデビュー予定の「NiziU」。きっと多くのファンが彼女たちの船出を待ち望んでいることだろう。今後も新たなオーディション番組が世間を賑わせるかもしれない。