12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
年末の音楽賞レースの“トリ”、『レコード大賞』が12月30日、放送される。かつては大晦日に放送されていたが、2006年に12月30日の枠に移動。限界説が何度も浮上しながら、踏みとどまっている格好だ。なぜレコ大は未だに続いているのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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30日夜、『第67回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)が4時間30分生放送されます。
同番組は今年で67回目になりますが、「かつて大みそかに生放送されていたことを覚えている」という人も多いのではないでしょうか。第1回から10回までは12月下旬で放送日が決まっていませんでしたが、第11回から大みそかで固定。「『レコード大賞』の受賞者が『紅白歌合戦』の会場に急いで移動する」という生放送の音楽特番リレーが定番となっていました。
しかし、徐々に『レコード大賞』の受賞辞退者が増えたほか、『紅白歌合戦』が開始時間を早めたことで放送時間がかぶってしまい視聴率が低下。アーティストの出演確保すら難しくなる中、2006年の第48回に放送日を31日から30日に移動させ、現在まで続いています。
今年の第67回が30日への変更からちょうど20年目の節目。追いやられるような形で移動したほか、他の音楽特番が次々に台頭し、賞の買収疑惑が報じられるなど、たびたび「限界説」が噂されながら、なぜ20年間も持ちこたえられているのでしょうか。
30日移動後は手堅く視聴率をキープ
実は最後の大みそか放送だった2005年と昨年の世帯視聴率を比べると、前者が10.0%で後者が11.2%とむしろ上がっています。ネットの発達でコンテンツが多様化したほか、録画や配信での視聴が増えて視聴率が下がる一方という厳しい状況の中、『レコード大賞』は30日への移動によって13~17%台を記録するなど結果を出していました。
むしろ「他の番組が大幅に視聴率を下げたのに『レコード大賞』はあまり下がっていない」という評価もあるなど、毎年楽しみにしている人が意外に多いことに気づかされます。SNSの普及で見ていない人からの批判が可視化されたものの、「年末の風物詩」として「毎年12月30日は『レコード大賞』を見る」という人はまだまだ多いのでしょう。
また、30日移動後の20年間における変化として見逃せないのは、個人の趣味嗜好が多様化したこと。好きなアーティストが分散化し、ヒット曲の定義もあいまいになったことで、「音楽の賞を決める」というアワードそのものに対する疑いの声も少なくありません。
しかし、その一方で今年、音楽主要5団体による『MUSIC AWARDS JAPAN2025』がスタートしました。フェアな選考と洗練されたステージ演出を掲げて「アメリカのグラミー賞を目指す」と公言しているだけに、今後こちらが浸透すると『レコード大賞』の存在意義に影響が出るのではないでしょうか。
