以前、木村さんはドラマを通して学ぶこととして、インタビューでこう語っていました。
「 表向きだけではなくて、そのバックヤードを知ることもあって。それは時に汚れた面だったり、人が知らない陰の努力だったりする。例えばホテルにお邪魔する時、ヘアサロンを訪れた時、飛行機に乗った時、国会議事堂や検察庁の前を通った時、そのバックヤードが垣間見えるような感覚を覚える瞬間はあります」(Yahoo!ニュース 特集2018年8月18日)
そう、今回のキムタクはいわばバックヤード的センスを学び、優秀なスタッフを輝かせて的確な指示を出せるマネージメント、いわば成熟した役柄への挑戦です。頬がこけてフケてきたキムタクのわびさびにこそ、バディものBGの見所があるのです。
「わび」という言葉の根元には「思い通りにならないつらさ」があり、「さび」という言葉は「生命力の衰えていくさま」を示す。けれど日本文化においてはそれこそが特有の美しさや価値を持つのです。
贅沢を言えば、ストーリーに関してもっとショボさがあって良かった。一話完結で難問を解決してしまうスーパーヒーロー的要素ではなく、やればやるほど問題がこんがらがり悩む職業人の姿があったらよかったのに。前作で評価が高かった『グランメゾン東京』(TBS系2019年)は、どちらかといえばそういうタイプの物語で、11話をかけて一つの課題を乗り越えていく、という苦悩ものでした。
というのも新型コロナの時代、「スカッと問題解決なんて実は無い」「嘘くさい」ということにみんなが気付いてしまったから。一気に解決できない複雑な問題をジワジワ、ジリジリ時間をかけ解いていくしかないことが現実だと思い知らされた。その意味では、スーパー派遣社員・大前春子がズバッと問題を解決してしまう『ハケンの品格』(日本テレビ系水曜午後10時)がやはり第2話以降に数字が落ち、見放されつつあるのと同じことかもしれません。
ドラマは時代を映す。今こそ単純な問題解決モノではなく、生活の中に横たわる問題を視聴者と共有しながら、少しずつ改善策を探っていくようなドラマが求められているのではないでしょうか。一言でいえば「スカッと」ではなく「ムズムズ」しながら、最終的な解決としての「キュン」が求められているのだと、ステイホームが教えてくれました。