自粛期間に自宅の庭などで植物や作物を育て始めた人もいる。しかし、もし手塩にかけた菜園が荒らされていたら…? 悲しい思いを経験した主婦の相談に、弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
うちの裏庭に小さな畑があり、野菜や植物を育てています。その畑の隣はちょっとした広場になっていて、近所の子供たちの遊び場になっています。子供たちはよくボール遊びをしていて、うちの畑にもボールが入ってくることがあります。そのため、ボールを取りに来るときは、「野菜や植物を踏まないように」とたびたび注意していましたが、先日、畑に行ったら作物がかなり踏みつぶされていました。
子供と思われる足跡が残っていたので、おそらく近所の子供たちです。犯人が子供だった場合、その親に弁償してもらうことはできますか。
【回答】
荒地と見間違って畑とわからない状態であれば、わざとやったとは言えないでしょうが、そうでなければ誰であれ、耕作している畑に立ち入って、作物を踏みにじることは許されません。耕作者に対する不法行為になり、立ち入った者に対して損害賠償を請求できます。
問題は、荒らしたのが子供ということです。幼くて物事の道理がまったくわからないときは子供には責任能力がないので、賠償義務はありません。その場合は、子供を監督する法定の義務を負う者(通常は親権者である親)が子供に代わって賠償責任を負います。
加害行為の態様によるので一概には言えませんが、小学校低学年であれば責任能力はないと解されていますから、その場合は親が弁償します。
例外として、子供に責任能力がない場合でも、親が注意監督を怠らなかったことを証明すれば、責任を免れることができますが、親は子供の性格や日頃の行いを知っているのが普通です。
家庭外の行為で直接監視できない場合でも、未成年者の親権者は、子の行動について他人に危険が及ばないよう注意して行動するよう、日頃から指導監督する義務があると解されています。よって、従来から責任能力のない子供の起こした事故の賠償責任の免責が認められることは極めて例外的です。