「卵のトロッと加減には、みんなうるさかったんでね。親子丼は、中火で調味料と玉ねぎを煮る。鶏肉を加えて火を通し、溶き卵を入れる。火は中火。そうしないと卵を入れた時にすぐに固まり、だしの上に浮いてくれない。それと、上から落とすように入れてもだしの上に浮かないから、周りからゆっくり入れるのがいい」
味付けは白だし、醤油、みりん、酒が各大さじ1、塩少々、砂糖は好みで。卵は一人分2個、玉ねぎ1/4、鶏肉はもも。
「蓋を閉めて弱火で30秒。中火のままで蓋をすると噴くからね」
ちなみに、そぼろ丼のおかずは前日作ったモツ煮込み。2日目のモツ煮込みは味が染みて、作り立てより格段にうまくなる。材料はシンプルだ。モツ、フワ、スジ、コンニャク、豆腐、生姜だけ。肉の種類はもちろん牛。フワは肺の部分で、フワフワした食感が特徴だ。
「スーパーに煮込み用モツが売ってたんでね。モツは強火で10分以上煮てから、キレイに洗う。コンニャクも2〜3分再煮沸してから湯切りしておく。若いのは面倒がってこの手間を省こうとするんだが、臭みが出てまずくなる。なんでも、うまくやるには必要な手間を惜しんじゃいけない」
料理は仕事のやり方にも通じるらしい。
「下処理をしたら後は簡単。鍋に湯を沸かし、沸騰したらモツとコンニャク、酒と生姜を入れてしばらく煮る。まめにアクを取り、味噌、醤油、みりん、砂糖、塩で少し濃いめに味付けて、1時間ほど煮込むだけ。味噌は合わせ味噌のだし入り」
「豆腐は火を通してから入れる。煮込んでかき回すと、豆腐がグチャッと崩れるんでね。できあがったら2時間ほど寝かせると、味がしみ込んでうまいんだ」
そう言いながら、昨日、来ていた若いのは味がしみ込むまで待てなかったらしい。
「30分くらいで食べた始めてた。感染者がまた増えてきて、店の方も思ったほど客足が戻らずボチボチってくらいだから、みんな暇でね」
「小池も、東京アラートとか何のためかわからないもんで騒いだだけだし。だいたい昼間は他県からの通勤者で2000万人にもなる東京で、数十人程の感染者で大騒ぎして、夜の街関連の接待を毎日のようにテレビで非難する。一円玉2000万枚の中から、昭和○年のものが数十枚あるので探してくださいって言っているようなものでアホらしくなる」
「仕事を再開するため、従業員や女の子全員にPCR検査や抗体検査をさせる店もあるが、敢えて検査するのも怖いよねと言う女の子は多い。再営業の建前的な部分もあるし、このままで大丈夫と思っているヤツの方が圧倒的に多いんじゃないかと思うけどね」
「小池自身は生活難にもなってないのに、言いたい放題やりたい放題。もう少し一般人の目線で物事を考えてほしいものだ」
元組長といえど今は一般人。都知事選の結果を横目に、卵そぼろに奮闘しながらそう憂いていた。