子供の性格に合わせて寄り添い方を考える

初期中絶手術の主な流れ

 中絶をしたら、問題がすべて解決するわけではない。ここから心のトラブル「中絶後ストレス症候群(PASS)」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」などを引き起こす可能性があるからだ。

「だからといって腫れ物に触るように接するのもおすすめしません。“次は祝福できるときに妊娠しようね”など、親は前向きな話をしてあげればいいと思います」

 中絶をなんとも思っていない子も確かにいるが、術後にあまりにもあっけらかんとしている場合は、傷ついた心を守るため、逆に傷ついていないふりをしている可能性もある。そういう子は、後で悲しみや後悔に苛まれ、苦しむことになる。

「親は子供の性格なども考えながら、術後もしっかり寄り添ってあげてください」

 若くして中絶を経験したことのある助産師や養護教諭をしているメンバーが無料メール相談に乗ってくれるNPO法人ピルコンの理事長・染矢明日香さんは、手術後も親がこれまでと変わらずに接してくれたことがありがたかったと語る。

忘れてはいけない。男も当事者である

 これまで、妊娠をした女の子とその親について語ってきたが、中絶をする場合、妊娠をさせた相手の男性の同意が必要になる。未成年同士なら、さらに女の子の親、相手の男の子、男の子の親のサインも必要な病院がほとんどだ。妊娠は女の子1人ではできない。相手にも責任がある。

 NPO法人ピッコラーレの副代表で助産師の土屋麻由美さんはこう言う。

「“彼女が妊娠しているかもしれない”と相談してくる男の子も15%前後います」

 このように、彼女を心配して一緒に考えてくれる男の子ならいい。しかし、「生理が遅れている」とか「妊娠していた」と伝えたら連絡がとれなかったという相談は多い。

「うちの息子の子供だという証拠はあるのか、というようなことを言われて傷つき、“もう、うちだけでなんとかします”というケースもあります」(土屋さん)

 相手の家族とこじれた場合は、弁護士を入れて話し合うこともひとつの手。法テラスなどを利用すれば、低額もしくは無料で相談できる。

「当事者である息子に、(あなたは責任を取らなくていいから)“早く忘れなさい”などと言うのではなく、起きてしまったことに対して、どのように責任をとるのかを一緒に考える姿勢が求められると思います」(土屋さん)

 もし、男の子の親なら、中絶を選択しなければならなくなった女の子の気持ちをいちばんに考え、寄り添っていくことが重要だ。

思いがけない妊娠を防ぐ方法を覚えておく

 最後に、緊急避妊薬「モーニング・アフターピル」のことに触れておこう。黄体ホルモンを主成分としたのみ薬で、性交後72時間以内に服用すれば、ホルモンの作用で妊娠を防げる(避妊成功率8~9割)。

 現在は、産婦人科医師による問診、場合によっては内診・超音波での診察を受ければ処方してもらえる。

 費用は病院によるが1回数千~2万円ほど。避妊をせずにセックスをしたり、乱暴をされた場合、そのまま放置して妊娠してしまうより、こういった方法があると知っているだけで、その後の問題を事前に回避できる。子供にはぜひ教えておいてほしい。

※女性セブン2020年7月23日号

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