最近は「エアリズムマスク」の発売で注目を浴びるユニクロ(時事通信フォト)
洋服の製造原価率を下げる手法は様々ありますが、もっともポピュラーで誰でも思いつくのが、「もっと大量に作る」「生地や縫製のクオリティをさらに下げる」という2つの手法です。
しかし、この2つは単なる悪手でしかありません。大量に作ればもっと大量に売れ残りますし、生地や縫製のクオリティを下げれば、さらに商品の評価が低くなり売れ残る可能性が高まります。その結果、また値引きを重ねることになります。そして業績がどんどん悪化するという“悪循環スパイラル”に突入してしまうのです。
安く大量に作ろうとすると、いまや中国ではなくバングラデシュなど東南アジアで製造するのが一般的な潮流ですが、そうした国々の工場では、安くて大量に作れる代わりにデザインの凝った物は不得意でベーシックな物が主流になってしまいます。
H&Mの商品からデザインの凝った物が減り、ベーシックな物が増えたのもそのためだと考えられます。そしてベーシック商品を増やせばユニクロと直接対決することになり、勝ち目は薄いという結果になるのです。
個人的な話で恐縮ですが、私は昨年夏にH&Mで派手な総柄プリントのTシャツを何枚か買いました。こういう商品はユニクロや無印良品には並んでいなかったからです。しかし、秋冬商品になるとベーシック品が棚を占めていました。同じベーシック品を買うなら、迷わずにH&Mよりも品質の高いユニクロか無印良品で買うのが無難だと考えるのは私だけではないはずです。
こうした商品戦略を続ける限り、H&Mの業績回復は難しいでしょうし、今後長期間に渡って停滞し続ければ、近い将来、世界2位の座をファーストリテイリングに明け渡すのではないでしょうか。