さらに、商品の在庫日数もピーク時に比べると格段に落ちていることを指摘する人もいます。
在庫日数というのは、短ければ短いほど商品が高速で売れているということになりますが、H&Mで2014年から2015年にかけて90日台で回っていた在庫は、2017年には130日近くまで伸びていたといいます。これは、売り切れるまでの期間が1か月以上伸びたということになり、相当に売れ行きが鈍ったことが分かります。
そもそも2008年の日本上陸当時にH&Mが大人気となった理由は、「商品の安さ」と「トレンド商品投入の速さ」でした。ファストファッションと呼ばれて持てはやされた所以です。
ZARAは欧米のコレクションブランドのコピーによって安さとモード感を得意とし、ユニクロはベーシックカジュアルの大量生産によって安さと高品質を打ち出しています。そんな中、H&Mはいわば、モードではなく“トレンドカジュアル”をファッションテイストにしてきましたが、定期的に国内の売り場を観察していると、2016年以降は「トレンドの速さ」が薄れてきたように感じられます。特にメンズはベーシックカジュアル商品が増えた印象です。
そして業績がピークアウトしたころから、商品が全般的によりベーシック寄りになったと感じています。しかし、ベーシックカジュアルに寄ってしまうと、そこにはアジア地区では強さを誇るユニクロが待ち構えています。定価は同じくらいだったとしても、品質では比べ物になりません。似たような物が似たような値段で販売されていれば、普通は品質の高いほうを選びます。そうなると必然的にH&Mはユニクロには勝てないということになります。
そして、売れ行きが鈍ってくると、残った商品を売りさばくために値引きを頻繁に行う悪循環に陥ります。値引きはその都度利益を削ることになるため、利益を確保するために製造原価率を下げる手法を使わざるを得ないのです。