国内

「何でも買えるダークウェブ」は幻想 詐欺の温床化が進む

3Dプリンターで製造された銃の使用も疑われた(時事通信フォト)

3Dプリンターで製造された銃の使用も疑われた(時事通信フォト)

 想定していないトラブルが起きたとき、ひとつの物事や人物に原因を求められがちだ。だが、実際に起きている出来事は、もっと複雑なものであり、何かひとつに原因を求めるのは気休めにしかならない。ライターの森鷹久氏が、一見するだけでは不可解な事件が起きると「ダークウェブ」に端緒を見出したがる傾向についてレポートする。

 * * *
 今年6月、東京・八王子で男子高校生が自殺した事件。発生直後、事件記者たちに衝撃が走ったのは、男子高校生が拳銃を使って自殺した、という情報が駆け巡ったからであった。全国紙警視庁担当記者が当時のことを振り返る。

「高校生が一般的な銃を持っているとは考えられず、最初は『3Dプリンター』を用いたり、水道管を使った手作り銃ではないか、との憶測も広がりました。その後、どうやら銃が本物らしい、ということになり、そうなればネットを使って高校生が購入したのではないかと、警察は実際に高校生の携帯電話などの解析を行いました」(全国紙警視庁担当記者)

 間も無く、銃がアメリカ製の本物で、実弾50発も見つかったことで空気は一変。彼が高校を休みがちだったことから、銃がいわゆる「ダークウェブ」など、パソコンやインターネットに詳しい人間しか知らない世界で秘密裏に購入されたものではないか? との憶測が、当局や記者の間に急速に拡がったのである。

 先に言っておくと、銃は元外務省のノンキャリア職員で、海外駐在歴もあった高校生の父親(故人)が日本国内に持ち込んだもの、という見方が今では強い。当局の捜査でも、高校生がダークウェブなどにアクセスした形跡は確認されていないという。それにしても、銃器犯罪について豊富なデータベースを持つ警察担当記者たちが、一時的とはいえ「ダークウェブ」由来の銃だという説にいっせいに傾いたのは、知識不足によるものではなかったか。

 何かわからないことがあると、なんでも「ネットのせい」にするマスコミや世論に違和感を抱いて、もう20年以上が経つ。ネットが普及していなかった当時と比較すると、その向きはいくらか薄まってはいるものの、今度は特殊なブラウザなどを用いてしか閲覧のできない「ダークウェブ」という存在にいっせいにすがっているように見える。考えられない事件や新しい形の問題が起きた時に、特定の存在に責任を押し付け、安易に端緒を見出そうとする姿勢は変わらないではないか。

 ダークウェブ上では、基本的に匿名で活動する人間の方が圧倒的に多く、物品の売買を行う際にもビットコインなどの仮想通貨が使われるために、どこの誰が何を取り扱っているか、一見するとわからない。実際に、ダークウェブの掲示板を覗くと違法薬物の販売を仄めかしたり、児童ポルノ映像のやりとりをしないか、といった書き込みも目立つ。英文ではあるものの確かに「GUN(銃)」などと書かれた販売ページも確認できた。ではここでなんでも買えるのかというと、実はそうではないらしい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン