日本の戦後復興でも国家主導の経済開発を進めていく。

「岸は日本初の高速道路『名神高速』の建設を1957年に開始すると、翌年には道路緊急整備措置法をはじめとする道路四法を成立させて道路整備5か年計画をスタートさせた。道路というと田中角栄首相が思い浮かぶかもしれませんが、その元をつくったのは岸です。電力については吉田首相は民間主導の石炭火力発電を重視していたが、岸は発電単価が安く自給可能な水力発電に力を入れ、産業全体の生産コスト低減を図るべきと考えた」(長谷川氏)

 こうした岸の経済思想は後輩の通産官僚に引き継がれ、“護送船団方式”で外資から日本企業を守り、育成していった。

 そして日本経済は岸内閣の下で「岩戸景気」と呼ばれる成長に向かうが、経済が成長すれば社会格差は広がる。

「それが日本のためになるなら社会主義にだっておれは賛成する」

 そういってのけた岸には復興の次に富の分配が政治テーマになることがはっきり見えていたようだ。「貧乏追放」の公約は今でいえば貧困撲滅、格差是正である。実は、岸の政策の中で歴史に最も大きな足跡を刻んだのが日本の社会保障制度を確立したことだ。

 岸は3年間の首相在任中に、「国民健康保険法」、「最低賃金法」、「国民年金法」を次々に成立させ、社会のセーフティネットを構築していく。それまでの健康保険には農家は加入できず、厚生年金は自営業者などは対象外だった。この法律で現在の国民皆保険、国民皆年金制度の基礎ができた。

 最低賃金法については岸が国会答弁で目的を語っている。

「日本の事情は、よく御承知の通り、特に中小企業が非常に多く、しかも従事している労働者の労働条件が悪い、賃金が低い、これを改善することが労働者にとって必要であるばかりでなく、中小企業の近代化や体質改善の上からいってもきわめて重要なものである」

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