予想の精度を保ちながら勝ち組へと歩を進めるには、思い込みにとらわれないことも重要だ。競馬ライターの東田和美氏が新潟夏の名物重賞について考察した。
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今週から「夏の新潟」が始まるが、例年同じ時期に開催される「夏の小倉」は8月15日からの開催となり、今週から3週は新潟と札幌の2場のみとなる。これは五輪の馬術競技に馬運車や獣医師が必要になると見込まれたための措置だったが、延期決定後も変更されることはなかった。
一方マラソンは札幌で行なわれる予定だったため、この時期は函館開催が組まれていたが、こちらは延期に伴って例年通りの順序になった。しかも猛暑対策の意味もあるということで、札幌と新潟開催が昨年より1週多くなっている。
その結果、「夏競馬」はどうなるか。
北海道滞在以外の関西馬は、前半は出馬ラッシュを覚悟で新潟を目指さざる得なくなった。3歳未勝利戦はこの開催までなので死活問題。もちろん関東馬も同様だが、勝負はむしろ小倉が始まって、有力関西馬が西下してからになるか。小倉へ向かう関西馬は近年通いのことも多かったが、4週だけなので未勝利で優先出走権がとれたら、滞在して中1週で使うといったこともあるだろう。そういうあれこれを頭に入れ、たとえば競馬新聞では除外経歴などもチェックして、使う側の意図を推理することが重要になってくる。
さて開幕週の新潟メインはGⅢアイビスサマーダッシュ(以後アイビスSD)。直線競馬はスタートと同時に各馬が馬場のいいスタンド寄りを目指してくる。この重賞は今年で19回目だが1枠に入った馬が馬券圏内に入ったのは3着1頭のみ。2枠は9頭いるものの3枠も1頭(2着)だけだ。逆に8枠は7勝で3着以内に14頭、7枠も3勝で13頭。
ここ1年で直線競馬は24レース行われているが、そこでもこの傾向は歴然。1〜3枠に入った馬は1勝のみで、3着以内に入ったのも2回か3回ずつ。逆に7枠は6勝17回、8枠は6勝22回だ。
アイビスSDは第1回の2001年から2005年までは8月半ばに行われていたが、2006年からは開幕週2日目になっている(2012年のみ4日目)ので、ここからは2006年以降のデータを検証する。
馬場のいい開幕週に行われてもなお外枠が有利だが、当初5年間のデータを差し引くと、8枠が5勝3着以内11回、7枠は2勝10回、そして2枠が2勝7回と、このレースに限っては枠による有利不利はかなり薄れてくる印象だ。アイビスSDの前日に行われる直線競馬の結果を見ても外枠が断然好成績でもない。最多は4枠の4勝で2、3枠は7、8枠と同じ2勝ずつなのだ。今年は前日が2歳未勝利戦で、しかもミルファームvs松永康厩舎”みたいで参考にしづらいが、いずれにしろ「枠」を基準に考えるのは、少々危険だ。
とはいえ2006年以降のアイビスSDでも、1枠と3枠が馬券圏内に入ったのは2008年の1回だけ。2枠だけ2勝で3着以内が7回もあるのはなぜなのか。
一つには2枠が勝った2回はフルゲートではなかった。2011年は15頭、2014年は12頭。そして勝った2枠の2頭はいずれも1番人気。アイビスSDは過去14回で1番人気馬が7勝しているどちらかといえば堅いレースだ。
内枠に入ったことで人気を落とすこともあるわけで、枠順と人気はニワトリと卵だったりする。それでも1枠に入った25頭のうち、5番人気以内は2頭で二桁人気が20頭、同じく3枠には5番人気以内が4頭で二桁人気が15頭というのは少なすぎる。2枠には5番人気以内が9頭でそのうち6頭が3着以内に入っているのだ。内枠に入りながらなお人気を保ち続けた馬がその通り結果を出している。