「性欲は性欲、と割り切る優子ですが、恋をすると乙女になってしまう」(柴門さん)『恋する母たち』4巻より
時代は変わり、生き方や夫婦関係が多様化した結果、女性には妻、母、さらに働く女性と、求められる役割が増えた。男女逆転、男性化する女性などといわれるが、柴門さんは一蹴する。
「女のオス化といわれるけど、とんでもない。オスにはこんなことできません(笑い)。女性って、置かれた状況で人生が大きく変わってしまうんです。誰と結婚するか、子供を産むか産まないか、どんな会社に勤めるか。男性って結婚しようが父親になろうが、何があってもあんまり変わらないし、変わる必要がないと思ってる。ズルいですよね」
恋する母たちが生きる40代半ば、とはまさにそうして駆け抜けてきた20代、30代を経てちょっと息がつけるときなのだろうか。
「自分自身のゴールを思い描けるのが20代です。どんな人と結婚しよう、子供はこんなふうに育てよう、仕事ではこんなことを成し遂げたい、とあくまで自分が主人公として人生を描く。『東京ラブストーリー』や『あすなろ白書』に出てくる子たちなんかその典型で、あの子たち夢を見ながら恋ばっかりしてますよね(笑い)。それが30代になるとガラッと変わります。もう思ってもみないことの連続で、次から次へと災難がふりかかってくるんです。それは、“お母さん”としても、“妻”としても、“お嫁さん”としても。
何がなんだかわからないめまぐるしい日々を必死に過ごして、ちょっとだけ肩の荷が下りる、いわば魔の時が40代。今度は、ちょっとした隙間に入り込んでくる迷いや葛藤と日々せめぎ合っているんです」
「頼りない杏の表情がキリッと変わる瞬間です」(柴門さん)『恋する母たち』4巻より
自分の生きてきた人生や、それまでの決断に後悔や不安を覚えるときでも女性は決してそこから逃げないと柴門さんは言う。
「一度恋愛を経験した人はみな、心の中に“恋のスイッチ”があります。押されたらすぐに現役に戻れちゃう。どんなときに再起動されるかはわからないけれど、“何かの拍子”が起きやすいのが魔の時。それでも恋にうつつを抜かせないのがアラフォー女です。やらなきゃいけないことがたくさんあるんですから。
マルチタスクをこなし、求められる役割を生きて、ゆらがずに、ふんばり続ける女性がいて日本の家庭は成り立っていると思います。そうして頑張って生きている姿を描きたいと思ったし、失敗してもぶつかっていく女性にエールを送りたい、それが恋する母たちに込めた想いなのです」
※女性セブン2020年7月30日・8月6日号