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河井夫妻捜査、安倍政権による「指揮権発動」の可能性指摘

元法務大臣の逮捕で…(時事通信フォト)

 安倍官邸とも近いとされてきた河井克行・案里夫妻の逮捕は、永田町・霞が関をはじめ、各界に衝撃を与えている。東京高検の黒川弘務・前検事長の賭け麻雀問題など、検察組織が揺れている中、なぜ検察当局は逮捕に踏み切ったのか。元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏と、ジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京新聞論説副主幹)が語り合った。

 * * *
郷原:河井夫妻の問題がなぜ急速に事件化したかというと、法務省が機能停止していることが影響していると思います。

長谷川:どういうことですか。

郷原:これまでは、検察の暴走は法務省が抑えてきた。より具体的に言うと、政治的な案件でいろんな影響が及ぶことは法務省刑事局が抑えてきた。ところが今、黒川弘務(前)検事長の辞職、検察庁法改正見送りの中で、法務省の検察に対する歯止めが全く利かない状態に陥っている。検察がやっている河井夫妻事件がどういうものかというと、今までだったら公選法違反で摘発してこなかった事件です。

長谷川:そうなんですか?

郷原:もともと選挙違反を摘発してきたのは警察であって、それも警察が摘発する選挙違反というのは選挙期間中か、その直前でした。そこで投票を依頼する買収、あるいは運動員の買収、こういった選挙と直接つながるものが公選法違反の買収なんです。

 ところが今回の河井氏の買収というのは、選挙から3か月ぐらい前のものが中心で、突然参議院選の候補に担ぎ出した河井案里氏の地盤を作ってあげなくてはならないということで、有力者にいろいろ働き掛けをして、その費用が掛かったということ。そこで有力者のところに、これは運動員にやらせるわけにはいかないし、秘書でも駄目ですから、河井克行氏本人が行ったと。

長谷川:3か月前だと通常は摘発されないんですか。

郷原:地盤培養行為と言って、公選法ではなく政治資金の問題になってきます。自民党本部から県連、県連から各支部に流れた資金は最終的に政治資金収支報告書に記載されて、表のカネになって、自由に使われるもの。今回の件も、昨年4~5月のことですから、本来は3月末に政治資金収支報告書へ記載するつもりだったんじゃないでしょうか。領収書のやり取りをしていないというが、領収書なんて、実際には収支報告書提出の直前に作成することも多い。自民党本部から各支部へのカネの流れは、基本的には政治資金のルートを予定していたはず。それを効果的に有力者に回して「案里をよろしく」、そして「(対立候補の)溝手さんの支援はやめてください」と。こういう趣旨で現金をばらまいたという行為は、克行氏が直接現金で手渡したということと政治資金収支報告書の処理ができなかったこと以外は、今までとあまり変わらないんです。ところが今回、検察は、1月に強制捜査に入って、直接現金のやり取りをしているという点を強調し、刑事事件にした。

 これまでのパターンでは、おそらく法務省が止めていたはずです。しかしその止める立場の法務省が今、全く力がなくなっている。だから検察が刑事事件として立件することができたんです。しかし、選挙から3か月も前のことで、支持拡大のためにお金をまく行為であっても、公職選挙法の条文を素直に読むと買収に当たる可能性は十分にあるんです。「当選を得させる目的で」「選挙人」又は「選挙運動者」に「金銭を供与」すれば、条文上は買収が成立するんです。ただ、「地盤培養行為」だという弁解が出てくる事案は、これまでは適用されてこなかっただけで。

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