大金を持ったままタイに……
Bに当せん金を浪費され気が気でないAが次に頼ったのは、40代のタイ出身の女性Cだった。8年ほど前に来日したCは目鼻立ちがくっきりした美女で、高齢の日本人男性と結婚後、死別した。独り身となってからは県内のスナックで働いており、「同性のタイ人から見ても美人で、日本人にすごくモテた。昼間はスロットで大金を平気で注ぎ込んでいたので、すごいお金持ちなんだなぁと思った」(Cを知るタイ人ホステス)との評判だった。
当せん金受け取りから半年が過ぎた2019年の年の瀬、「大金を下ろすと銀行に目をつけられる」などと言ってはカネを引き出そうとしないBに、Aは「Cは妹のような存在。彼女と一緒に僕のお金を下ろしてきて」と迫った。Bも渋々同意し、Cと一緒に2020年1月に8000万円ほどの当せん金を引き出したという。
しかし、事態はさらに複雑になっていく。今度はCが当せん金を使い始めたというのだ。
「CはBを取り込んで、Bの口座から下ろした当せん金を次々とCの口座に入金させました。Cは交際していた日本人男性Dとともに、Bが裏切らないよう監視を始めた。当せん金を“巻き上げられた”形になったBは、『後でわかったけど、Cは全然良い人ではなかった』とこぼしていました」(前出・Aを知る関係者)
そして2020年2月、1億円以上の大金を得たCは、AやBに告げることなくタイに移住してしまったのだ。
不法滞在という弱みを抱えていたAだが、さすがにCの移住を見逃すことはできず、弁護士に相談する。そして同2月に損害賠償を求めてB、C、Dを民事提訴。さらに4月から5月にかけB、C、Dを横領罪で刑事告訴した。
7月30日に宇都宮地裁で開かれた裁判は、Cを相手取った民事訴訟である。