タイ人Aは逮捕され入管に……
「提訴により財産を差し押さえられたBからは、1億円近いカネを回収できたようだが、Cに渡った金は未回収のままだそうです。しかも、訴訟を起こした直後に不法滞在が明るみに出たAは3月に入国管理局に逮捕された。通常なら即強制送還ですが、いまは新型コロナの影響もあって都内の施設に収容されています」(前出・Aを知る関係者)
栃木県内でBに話を聞くと、困惑しながら次のように回答した。
「Aさんが逮捕されたことは知っている。大変なことになってしまった。でも、私はAさんに頼まれて手を貸しただけなんです……」
はたして強制送還を控えたAは大金を取り戻せるのか。母国で暮らすCに捜査の手は迫るのか。
入管法や外国人関連法制に詳しい、さくら共同法律事務所の山脇康嗣弁護士が指摘する。
「不法滞在で強制送還されると上陸拒否事由に該当するため原則5年間は来日できません。代理人弁護士を通じて損害賠償請求を続けることは可能ですが、それを理由としたA本人の再来日は容易ではありません。また刑事事件は被疑者が国外にいる間は公訴時効の進行が停止する。弁護士が日本の警察に対して、国際電話などを用いた捜査を促すことは可能ですが、警察は民事事件の交渉に刑事事件の捜査が使われるのを嫌がります。仮に日本の捜査機関が国際電話などでCに接触しても、“海外にいるから捕まるわけがない”との確信が彼女にあれば、使い込みを防ぐ効果は薄いとみられます」
捜査はどうなっているのか。所轄の栃木県警宇都宮中央警察署は、「告訴状の受理の有無も含めて、現時点でお答えできない」とコメント。Aの代理人である青木健悟弁護士は、「B、C、Dの行為は横領罪に該当するため、捜査機関に対し告訴状を提出し、受理されている。民事訴訟については一切お答えできない」と語った。
Cが被告となった訴訟の第1回口頭弁論では、現在もタイにいるであろうCの出廷は当然なく、Cの代理人すら選定されていないことが明らかになった。一連の訴訟資料を確認した裁判官は、早ければ8月に開かれる次回の裁判で判決を言い渡す予定だと述べ、約15分で閉廷した。
6月末、Cは自身のフェイスブックにタイでの生活の様子をアップした。そこには、新築した豪邸の披露パーティで満面の笑みを浮かべる彼女の姿があった――。