かつてはハードボイルドな役が多かった大森南朋

 テレビの中で「カワイイおじさん」が求められている傾向が顕著になっている、と言えないでしょうか?

 例えば今週813日スタートの新ドラマのタイトルは『おじさんはカワイイものが好き』(日本テレビ系 木曜夜11:59)。仕事ができる営業部課長が、実はこっそりカワイイもの好きという設定で、眞島秀和さん演じる新たなおじさん像に注目が集まりそうです。(眞島さんは「新型コロナ陽性判明」の報道が流れましたがドラマはすでにクランクアップしており、放送自体に影響はないもようです)

 少し時をさかのぼれば『きのう何食べた?』(テレビ東京)で内野聖陽さんが演じた矢吹賢二だったり、『おっさんずラブ』(テレビ朝日)の吉田剛太郎さんによる黒澤武蔵など、キャラクターは少しずつ違いますがそれぞれ「カワイイおじさん」ぶりが輝いていました。

 潤い、励まし、共感、癒やしを与えてくれるカワイイおじさんの存在。働く女性が増えた今、多くの視聴者が求めているのはじっと瞳を見つめる恋愛対象のイケメンに代わり、むなしさも愚痴もストレスもひっくるめて受け止めてくれる人。「たしかにそうだよね」「わかるわかる」と相づちを打ってくれ、「そうか、たいへんだったね」「おつかれさま」と何気なくねぎらい労ってくれるような。前に進んでいくための声がけを続けてくれる、併走者のような。

 日常の中にそんな存在がいて欲しい、という願望が膨らんでいるのかもしれません。

 野球に例えれば、自らピッチャー役を担うことが増えた女性たちは、自分の投げる剛速球を受け止めてくれる「女房役」を必要としているのでしょう。そこに「かわいいオジサン」像がハマッた、ということかもしれません。

 しかし願望を日常の中で実現するのはなかなか難しい。だからこそ、ドラマという架空世界の中でかわいいオジサンが愛されるのかもしれません。

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