今後、YouTubeが更に身近なものになれば、テレビは意図せず映画のような存在になっていく。動画としてのクオリティはYouTubeに勝るが、親しみやすさはどんどんと失われていく。テレビにしか出ないタレントは、映画にしか出演しない俳優のような存在感を持つ。映画館に足を運ぶような感覚でテレビのスイッチを押す。映画を観るように構え、テレビ番組を視聴する時代になっていくと思う。
このような時代だからこそ、テレビの全盛期を駆け抜けた数少ない女芸人・山田邦子の視点は貴重だ。当事者として1980年代のバラエティ黄金期を語る資格を持つ女性は山田だけかもしれない。だがそれを見せびらかすのではなく、まるで「3丁目の○○さんをスーパーで見かけたのよ」と話すような口調でリズミカルに語ってみせるのも、山田の芸の内なのだろう。