「これまで公的病院には、へき地医療や採算の取れない診療科を設置して地域の医療インフラを整える目的があり、赤字でも自治体からの税金で運営されてきました。しかし人口減で税収が伸び悩み、現状の医療体制を維持することが限界になりつつある現在、再編統合の流れが強くなっています」
病院の現状を理解するには、経営状況を知ることも大切だ。総務省の調査では、平成30年度に全国の地方公共団体が経営する病院事業の56%が純損失を出し、累積欠損金は約1兆9000億円に上る。
そこでリストには、60病院の自己資本比率を併記した。
「自己資本比率は、病院の経営状態を表わす指標のひとつといえます。この比率が低いと借金の割合が高いということになりますが、一般企業と違って病院はキャッシュフローが潤沢のため、債務超過でも銀行が融資するケースが多く、直ちに経営危機とは言えません。
ただし今後、新型コロナの影響でさらに患者が減るとキャッシュフローも減り、経営が傾いてしまう可能性があります」(室井氏)
患者としても、通っている病院の財務状態を知っておくのは重要になってくるというわけだ。山田氏もコロナの影響を心配する。
「新型コロナの患者を受け入れた病院の約7割が公立・公的病院です。この先、またコロナや未知の感染症が出てきたときに、再編統合で病院が減少していたら、患者の増加に対応できるのか懸念されます」