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自転車シフトが追い風 部品メーカー「シマノ」快走の軌跡

自動車部品の電子制御化に先鞭をつけた5代目社長

 2001年、島野容三が島野三兄弟から経営を引き継ぎ、5代目社長の椅子に座った。2代目社長、尚三の長男で慶應義塾大学商学部卒。島野三兄弟はシマノを世界企業に発展させることに力を注いだが、容三の代になって文字通りグローバル企業に羽ばたいた。

5代目の島野容三社長(時事通信フォト)

5代目の島野容三社長(時事通信フォト)

 いま、自転車愛好家の関心は自転車部品の電子制御に移っているが、ここでもシマノは、その先鞭をつけた。

 2009年、高級ロードレーサー向けに電子制御技術を初めて実用化した。変速装置はレバーとギアをワイヤーで結び、物理的に引っ張ってシフトチェンジする。ところが、今では手元のスイッチから電気ケーブルや無線で信号を送り、モーターで変速装置を動かす。

 永遠のライバルのイタリアのカンパニョーロは2012年に追随、2015年には米スラムが同様の製品を発売して世界の大手が電子制御技術で足並みを揃えた。

 容三は社長就任から19年経ち、社長交代の時期を迎えている。島野一族の取締役は、専務の泰三1人だけ。3代目社長敬三の息子で、高品質・高性能の部品を供給するバイシクルコンポーネンツ事業の事業部長を務める。容三の長男、豪三は同事業の企画部長。容三は豪三を取締役に昇格させ、後継者に据えるものと見られている。

 いまやグローバル企業となり、外国人の株主比率も42.34%(2019年12月期)と高いシマノは、どこまで同族・世襲経営を続けるのか。トップ人事も今後の見どころの一つだ。

 新型コロナの「3密回避」需要の追い風が吹いたが、不安材料もある。シマノが開く自転車レースや釣り大会がコロナの影響で軒並み中止になり、シマノブランドのファン層を拡大する機会が減っていることだ。国内では三重県鈴鹿市と長野県富士見町で自転車関連のイベントを主催してきたが、今年は7月までに両方とも中止を決めた。

 こうしたイベントは今後の市場動向を占う場にもなっていただけに、その影響が懸念されるところだ。

(敬称略)

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