──扇千景さんでいらっしゃいますね。
「いえ、違いますけど」
そう言って顔を背ける扇。予想外の対応だ。
──突然、申し訳ありません。その気品、お美しさは間違いなく扇さんだと。
「(おもむろにこちらを向いて)うふふ。で、なんなのかしら?」
──昨今、芸能界を騒がせている不倫騒動について、扇さんのご意見を伺えないかと思いまして。
「あはは。なにそれ。いや、私はいいわよ」
──東出さんや渡部さんの不倫の件など、どのようにお感じですか?
「えぇと……なんだか大変そうですけど、わたくしからお話しすることなんて、そんな。何もないですよ。すいませんね」
大女優の風格を漂わせながら優雅な足取りで去って行った。
※週刊ポスト2020年8月28日号