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マンション上階から漏水 水浸しになった家具は弁償される?

天井から水漏れしても、上階の住人に賠償金を請求できない場合も(イラスト/大野文彰)

 マンションの上階から突然の水漏れ…! 東京都の会社員女性のAさん(47才)は、突然そのような被害に遭った。さまざまなものが水浸しになり、生活にも困っているが弁償はしてもらえるのだろうか。弁護士の竹下正己氏に話を聞いた。

【相談】マンションの上階の部屋から水が漏れ、私の部屋の天井が落ちてしまいました。原因は老朽化による水漏れだったので、マンションの管理組合が加入している保険で天井の修理をしてもらいました。

 しかし、水浸しで使えなくなった布団や家具、本などについては保険がおりませんでした。上階の人からはお見舞金を少しもらいましたが、それだけでは足りません。使えなくなった布団や家具、本などを上階の人に弁償してもらうことはできますか。

【回答】
 分譲マンションと仮定して検討します。まず、賠償請求の相手ですが、「老朽化」していたという漏水場所によって違ってきます。

 漏水事故は、建物内の何らかの施設の不具合によって発生します。民法に、土地の工作物の設置または保存の瑕疵が原因で損害を与えた場合、まずその占有者が責任を負い、占有者が損害防止に必要な注意をしていたときには所有者が責任を負う、という規定があります。

 建物内の設備は、建物とともに土地の工作物とされています。また瑕疵とは、通常備えておくべき安全性を欠いていることをいいます。大地震のような不可抗力の場合を除いて、漏水事故を起こした設備の瑕疵は否定できません。

 しかし、上階からの漏水であっても、上階の住人に責任追及できるのは、上階の住人の占有や所有する建物内に漏水の原因となる瑕疵があることが前提になります。

 マンションは、各住人が区分所有者として個別に独立して所有する専有部分とそれ以外の廊下・階段室・外壁・スラブなどの躯体等からなる共用部分とでできており、上階住人が占有や所有するのは専有部分だけです。

 もし、上階の専有部分の室内防水層や給排水管の室内に立ち上がっている部分の老朽化が原因であれば、専有部分の瑕疵になり、上階住人の責任を問えます。この場合は、家財道具の水濡れ等の損傷は、漏水から通常発生する損害ですから、その賠償を請求できます。

 しかし、漏水箇所が上階の専有部分と断定できない場合は、区分所有法の第9条で「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する」と定められているので、共用部分の瑕疵と推定されます。

 共用部分は全員の共有ですから、この推定が働くと全員が責任を負うことになります。具体的には、区分所有者全員で構成する管理組合の責任です。その場合でも同様に家財道具の損傷の賠償を請求できます。しかし、管理規約で損害の補償の範囲を限定している場合もあるかもしれませんので確認してください。

 保険金が出たのですから原因調査はなされているでしょう。上階の専有部分が原因であれば、保険会社もあなたに支払った保険金について上階住人にその求償を請求しているかもしれません。まずは、管理組合や保険会社に問い合わせるのがよいと思います。

【profile】
弁護士・竹下正己●1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2020年9月3日号

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