安倍晋三・首相(65)は8月17日に慶応病院で検診を受け、当日のうちに退院した。首相の体調悪化説に火をつけたのは8月4日発売の写真週刊誌『FLASH』の“吐血”報道だった。7月6日の首相動静に5時間の空白があり、永田町ではこの間に吐血したのではないかという情報がめぐっているという内容だ。
安倍首相は19日に官邸で記者団の取材に応じ、「体調管理に万全を期すために、先般検査を受けた。これから再び仕事に復帰してがんばっていきたい」とカメラ目線でそう語った。意地っ張りな性格の首相は、側近の萩生田光一・文部科学相や甘利明氏らが「もっと休養をとってほしい」と言うほど、意固地になる。
しかし、いくら官邸に入っても、国会を開き、記者会見にも応じて政府がコロナの感染第2波にどう対応しようとしているのか、国民の不安に正面から答えないのであれば総理としての責任を果たすことにはならない。それができないほど体調が悪いのであれば、総理の任を一時余人に委ねてでも、静養して体調を万全に整えるのが政治家の責任だろう。
この総理は自分が静養を拒否するほど、党内で権力闘争が激化し、政権が“死に体”に向かうことに気づいていない。コロナ対策に全力を投入する気力と体力がないのなら、国民は安倍首相に早く交代してもらったほうがいい。
だからといって、後継首相が誰でもいいわけではない。麻生太郎・副総理が期待する安倍首相からの政権禅譲にしても、二階俊博・幹事長らの話し合いによる菅義偉・官房長官の後継にしても、いずれも次の総理選びのプロセスが国民には見えない「密室」で決められる。
ここで思い出されるのが、2000年4月、時の小渕恵三・首相が脳梗塞で倒れて搬送された翌日にホテルニューオータニで開かれた、いわゆる「五人組の密議」だ。