国際情報

全米を熱狂させるトランプ大統領「影の首席補佐官」の話術

全米一の人気者・ハニティ氏(AFP=時事)

 日本でも、安倍晋三首相に批判的な朝日新聞や毎日新聞などリベラル系メディアと、応援団のような報道が目立つ産経新聞、読売新聞、NHKなどの保守系メディアの違いが注目されているが、アメリカのメディアはもっと極端に左右に割れている。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、アメリカでは超有名な「トランプ大統領の盟友」を紹介する。

 * * *
 この男、ニュース番組の途中でカメラに目線を送ると、「それではホワイトハウスに電話を入れてみます」と平気で言う。スタジオから電話をかけると、本当にトランプ大統領が電話に出てくる。アメリカ大統領が、こんなに簡単にテレビの生インタビューに応じている光景は、かつて目にしたことがない。

 しかも、この男の話し方は大統領に対するものには聞こえない。まるで友達と会話しているようだ。緊張感もなければ、儀礼的な言葉使いもない。他のインタビュアーが必ず使う「ミスタープレジデント」という呼び方も彼は使わない。トランプ氏のほうも、好きなことを好きなように話す。そして、すぐに激しい口調になる。お互い熱を帯びてくると、同僚同士がレストランで政治談議をしているようだ。それほど気が合っているのである。

 この男こそ、「トランプチャンネル」とか「共和党テレビ」などと揶揄されるFoxニュースのアンカーマン、ショーン・ハニティ氏である。極端な右寄りの言動で知られるが、筆者はそんな言葉では足りないと思う。言うなれば「左殺し」である。左派攻撃では一切手加減せず、相手が黙るまで徹底的に論難する。最後はボクサーがサンドバッグを好きに叩いているような光景になる。

 ハニティ氏の「武勇伝」は数多くあるが、古くはクリントン氏が大統領だった1990年代に起きたホワイトウォーター疑惑(クリントン夫妻が関わったとされる不正な不動産投資事件。結局、大騒ぎの末に何も証拠は出てこなかった)で、夫妻の顧問弁護士が自殺したことを「クリントン夫妻が殺した」などと強い言葉で非難して物議をかもした。前回の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン候補が演説の際に檀上がよろめいたことに目を付け、「彼女はパーキンソン病だ」と発言して陣営を苦しめた。さらに、2012年に起きたベンガジでのアメリカ大使館襲撃テロについて、国務長官だったヒラリー氏は事前に情報を得ていながら大使館員を見殺しにしたと批判した。いずれも、それを裏付ける証拠はない。

 ハニティ氏はFOXの看板スターで、その地位は確固たるものである。視聴率は、すべてのケーブルニュース番組でナンバーワン。さらに、全国のラジオに毎日のように出演し、右寄りの思想を広めている。そのエネルギーには敬服するし、彼の年収は何億ドルにも達すると推定されている。筆者も彼のニュースショーをよく見るが、ナレーションのうまさ、印象に残る独特のツッコミ方、証拠の乏しい(あるいはまったくない)話をまことしやかに構成する能力、正義感を醸し出す熱弁、どれをとっても超一流で、生まれつきの論客だ。その魔術にかかると、何が真実で何が正義か、いつの間にかわからなくなってしまう。

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン