日産の中大型車づくりに役立つホンダの技術
だが、そんな世知辛い話を脇に置き、日産とホンダのクルマ作りが融合したらどうなるかということを考えると、これは結構面白そうだ。
両社とも軽自動車からラージクラス、スーパースポーツまでをカバーするフルラインナップメーカーという体裁を取っている。だが、開発費用がかさむ現代のクルマ作りの実情に鑑みれば、それぞれグローバル500万台という規模でフルラインをやってきたこと自体に無理があった。
実際のクルマ作りを見てみると、日産とホンダは得意とするところがまったく異なる。日産は中・大型車が得意でサイズが小さくなるほどクルマ作りの特色が薄れる。逆にホンダは小さいクラスについてはきわめて良い技術を持っているが、大きくなるにつれてクルマ作りがつたなくなっていく。
仮に経営統合してひとつの会社になったとすると、「アコード」のように車名自体がブランド化している売れ筋モデルを除き、ホンダは軽~小型車、日産は中~大型車と、ビジネスを分けることができるようになる。しかも、それぞれ得意としてきた技術を持ち寄ることができるとなると、クルマのレベルもぐっと上がるだろう。
例えばである。日産はインフィニティという高級車ブランドを持っている。日本で「スカイライン」として販売されている「インフィニティQ50」に乗ると、2013年という登場時期の古さにもかかわらず、欧州プレミアムセグメントの同格モデルにひけを取らない素晴らしい走りと快適性を持っている。
ブランド力不足で苦しい戦いを強いられているが、それでもアメリカではデビュー時期が近いトヨタの同格モデル「レクサスIS」より販売台数は上だ。日産はデザインや質感を別にすれば、そういう高級車作りは伝統的に上手いのだ。
ところが、世界的にCO2規制が強められている昨今、高級車分野は単に速いクルマを作りましたでは済まされなくなっている。にもかかわらず、日産は純EV以外、高級車の低CO2化を劇的に進めるソリューションを持っていない。
そこで出番が期待できるのが、ホンダのシリーズハイブリッドシステム「e:HEV」である。
ホンダが誇るハイブリッドシステムe:HEVを搭載した「アコード」
筆者は今夏、排気量2リットルエンジンをセットアップしたe:HEVを積む中型セダン「アコード」で4000kmあまり旅をしてみたが、e:HEVの性能たるや素晴らしいの一言。絶対的な加速力の高さ、加速の滑らかさ、レスポンスの良さ、エンジン音の静かさ等々、大排気量V6へのノスタルジーを完全に吹き飛ばすような感じだった。それでいて燃費はトータルで20km/Lを軽く超えるのである。
日産の中大型車づくりに関する知見とホンダの電動化技術を足せば、両社が独自技術にこだわってバラバラに作っている今よりはるかに良いクルマができ、しかも低CO2化という社会の要請にも的確に応えられるようになるだろう。