第9話は、豚次に恋するアライグマのオスカルが豚次を追って掛川から京都へ来て「モグラの爺さんに生まれ変わって豚次と生きる」という哀しい選択をする7話『悲恋かみなり山』の続き。その経緯を手短に話してから、チャボ子と牛太郎が豚次と合流して和歌山から四国へ渡る本編へ。権蔵の愛人チワワのお菊がマリーと共謀して豚次の命を狙うが、鳴門の大渦に巻き込まれたお菊を救うべく、豚次は危険を顧みず海に飛び込んだ。そんな豚次の男気に惚れたイルカのミチル親分が、一行を淡路島沖から徳島へと運ぶ。
劇的な展開がもたらすカタルシスは、さすが稀代のストーリーテラー。やはり白鳥は「現代の圓朝」だ。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2020年9月4日号