その決断はいかにして? 出走馬を見渡して、「このメンバーならこの馬」という場合もあるだろうし、「この馬、絶好調!」とピンポイント予想もありそう。穴馬ばかりに目が行く人もいる。全出走馬の取材は叶わぬだろうから、足を運んだ陣営の馬がひいき目になることも。人それぞれである。
その◎鈴なりの未勝利戦、2着に8馬身差で圧勝。しかもレコード勝ちである。全員一致レベルの強さだった。
同じ日の特別戦。8頭立ての芝2000メートル。14人中10人が◎、4人は○という馬がいた。単勝オッズ1.9倍。鞍上はリーディングをひた走るルメール。少頭数でこの距離。前走を見てもこれは◎◎だ(私の両目が◎)。馬単で大枚勝負。
ところが、直線で前に出た2番人気馬に少しも差を詰め切れずに2着に敗れた。私の両目は××となった。勝馬に◎を打ったのは3名いた。自分で決断したのだから文句は言うまい。
瞠目とまではいかないものの、「おっ?」と思わせる◎もある。たまに、他の多くが無印なのに一人だけ◎を打つ場合が。いわゆる「ポツン二重丸」である。
こっちのほうが、穴党には多数一致よりも気になるのだった。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年9月4日号