スパイスカレーとカツという野心的な挑戦に早くから取り組んでいたのは、5年前に開業した御徒町の「クローバー」や下北沢の「般若」、そして、閉店した浅草橋の「カレーピーク」といった店だった。
「もはやカツカレーに劇的な変化は生まれないだろうと思っていましたが、若手をはじめとした挑戦的なシェフの登場で、カレーもカツも進化を続けています」(小野氏)
洋食専門店だけでなく、普通の定食屋やフランス料理店などでもカツカレーが登場している。イタリア料理店の「サロン・ド・カッパ」では、オープンした10年前から、イタリア料理の調理法を巧みに取り入れたカツカレーを提供して人気を呼んでいる。
「“日本人はカレー好きだからカツも乗せておけ”と安易に考える店も多いので、双方がバランスよくそれぞれの良さを引き出す、“頭ひとつ抜けた”カツカレーを提供する店は少ないです」(小野氏)
たとえば、蕎麦屋で見かける黄色味の強いカレーは、炒めた具材をスープに入れて小麦粉でしめるレシピが多いが、「1892年創業の老舗蕎麦屋・東嶋屋は、小麦粉だけでなくラードを使用し、塩で味付けするなど工夫している」(小野氏)という。また、中華料理店ではカレーを片栗粉でしめた半透明の餡が特徴で、パーコーを乗せることが多い。
撮影■佐藤敏和、内海裕之、岩本 朗
※週刊ポスト2020年9月11日号