本社・自社ビル売却、MRリストラも加速

 売却するのは事業ばかりではない。武田薬品は2019年1月、大阪市内の本社ビル「武田御堂筋ビル」の売却を決めた。登記上の本社は、江戸時代から続く“薬の町”大阪・道修町(どしょうまち)にある。この本社のビルをはじめ地方に持つ21のビルなどをまとめて売却することも明らかにした。

「武田御堂筋ビル」は「米不動産ファンドに500億円程度で売却された」(関係者)。武田は売却後もこのビルを借りている。不動産の売却は全体で600億円程度になったとみられているが、金額以上の意識改革をウェバー社長は狙っていたのかもしれない。

東京にある「武田グローバル本社」(時事通信フォト)

東京にある「武田グローバル本社」(時事通信フォト)

 実質的な本社は東京に2018年春に完成した「武田グローバル本社」に移ったが、次の本社所在地は最重点市場と位置付ける「米国」になるかもしれない。

 8月17日には医薬情報担当者(MR)や事務職など国内従業員を対象に希望退職を募集することが明らかになった。募集人員は公表していないが、対象は30歳以上で勤続3年以上と若手も含まれている。武田は2100人のMRの見直しを進めており、コロナ禍で対面営業のモデル自体の再構築を迫られている。日本のマーケットとの根本的なかかわり方が変わるかもしれないのだ。

「コロナ治療薬」開発で米国市場を最重視

 いま、武田薬品は新型コロナウイルス感染症治療薬の一種である免疫グロブリン製剤の開発に乗り出している。コロナから回復した患者の血液成分(血漿)を投与する治療法をFDA(米食品薬品局)が緊急認可したからだ。民主党のバイデン候補に支持率でリードを許し、焦りまくっているトランプ大統領の大統領選キャンペーンの一環であることは言を俟たない。

 武田は昨年1月、シャイアーを買収し、血漿分画製剤で世界2位になった。今年4月、コロナ治療薬開発に向け、同製剤で世界1位の米CSLベーリングと提携。欧米で同製剤を展開する独、英、仏、スイスの企業も含めた6社で協力して開発・供給する体制を整えた。

 前述したように、ウェバー社長は米国市場を最重視している。コロナウイルス感染症治療薬で米国市場の殴り込みに成功なんてことになれば、アリナミンを売り飛ばしたことに痛痒を感じることなど、すぐになくなるかもしれない。

 こうして見てみると、武田薬品工業から「タケダ」の名前が消える日も、そう遠くないうちにやってくるかもしれない。

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