ペットロス座談会に参加した藤原和恵さん
思い出を話さずにいると会いたい、悲しい──さまざまな感情が心の中に積もってくると藤原さんは言う。
「思い出で頭の中がいっぱいになるので、それを座談会や話を聞いてくれるペット仲間に吐き出すと温かい気持ちになる。我慢してはいけないんだと気づきました」
ペットが死んだぐらいで悲しんじゃいけない、落ち込んじゃいけない、笑顔を消しちゃいけないという同調圧力こそ苦しみの根源だ。
「おじいちゃんやおばあちゃんが亡くなったとき、悲しかったですよね。その悲しみを忘れられますか? 理解できない人と無理に価値観を合わせる必要はありません。他人の心ない言葉や空気に傷ついているかたが多くいるんです」(松本さん・以下同)
松本さんはジグソーパズルにたとえて、こんな話をする。
「まさおが亡くなったとき、心のパズルのピースが1つ抜け落ちてしまいました。その喪失感を埋めようと、息子であるだいすけのピースを外して、まさおの場所に入れようとしたけど収まりが悪い。
そうか、まさおとだいすけは違う存在だと気づきました。心のパズルのピースが全部で100だとしたら、まさおが抜けた99ピースで完成なんです。現状は2つ抜けて98になっている。その事実を認めることが大切です。
悲しすぎて現実を直視できずにいると、いつまでたっても引きずります。座談会の参加者には、ペットの死を受け入れられず憔悴して、睡眠薬などに頼ってしまうかたもいます。でも、座談会でそのかたの話にみんなで耳を傾けていたら、最後に『悲しんでいいんですね』と受け入れられた。
みんな、そのコが死ぬ前に戻ろうとするから苦しい。悲しすぎてどうしていいかわからないという相談があるけれど、それはママやパパにしか味わえない気持ちです。なぜそんなに悲しいかというと、そのコとそれだけ強い絆でつながっているからなんですよ」
思いの丈を吐き出して気持ちの整理をしよう
話を聞いてくれる人が近くにいない場合、どうすればいいだろうか。
「ペットに話しかけるつもりで手紙を書くといいと思います。すると、この内容に間違いないかな? ちゃんとあのコに伝わるかな?と何度も何度も読み返すはずです。すると、ぼんやりしていた自分の悲しみや願望の輪郭が見えてくる」
そう自覚したのは、まさおくんが亡くなり、追悼本の中で手紙を執筆したのがきっかけだ。
「最初は、そんなに書く内容はないと思ったんです。でも、パソコンを立ち上げて『まさおへ』とひと言入力したら、もう止まらない。あれがしたかった、これがしたかった、あのときおれが気づいてたら…という思いの丈をすべて吐き出せました」
そのときにまさおくんが亡くなった“色と形”が見えてきたという。