臨床心理学者のメアリーによるとフレッドは「ソシオパス」の特徴をいくつも有するという。共感性を持たず、すらすらと嘘をつく、善悪の区別に無関心で、他者の人権を意に介さず平気で踏みにじる──そうした人物を親に持つことが、子供の人間的成長に与える影響は絶大だった。
「親がソシオパスだと、感情の表し方や人間関係のつくり方、道徳心などを学ぶべき時期に、それができません。そうした過酷な環境にいる子供は“混乱”に陥ります」
何よりカネとビジネスを最優先にするフレッドは、子供の相手をすることがとにかく面倒だった。そうした「無関心」がドナルドの人間的成長をさらに妨げた。メアリーは同書の中で次のように綴る。
《フレッドは普通のときでさえ、子供が愛情を求めるそういう行動を煩わしいとしか思わなかった》《(ドナルドとその弟ロバートが)寂しがって甘えたがれば甘えたがるほど、フレッドは二人を遠ざけた》(《 》内・以下同)
子供の成長期の心理に詳しいメアリー曰く「乳幼児の行動はすべて、親からの愛情表現を求めるためのもの」。子供が笑顔を向ければ親から笑顔が返され、涙を見せれば優しく抱きしめられるべきだという。しかし、そうした愛情表現は、フレッドにとって忌み嫌うべきものだった。父にそうした愛情表現を求めたドナルドは、時に激しい怒りを買い、ついには普通の子供のように父親から愛されることを諦めねばならなかった。
《結局、子どもたちは外界から孤立しただけでなく、子どもどうしでも疎外感を抱くようになっていく。つまり、他者と仲間関係を築くことがどんどん難しくなった》
※女性セブン2020年9月24日・10月1日号