「弱さこそ最大の罪」という父
ドナルド・トランプは1946年、トランプ家の第4子として、米ニューヨーク州に生まれた。祖父フリードリヒ・トランプは、ドイツ西部の小さな村に生まれ、アメリカへと渡った移民。飲食店や売春宿を営み、ひと財産を築いた。
その財産をさらに大きくさせたのが、父フレッド・トランプだ。フリードリヒがスペイン風邪で急死すると、家長となったフレッドは建築業の勉強に専念する。瞬く間にその才能を開花させたフレッドは15才の若さで不動産会社を創業し、ニューヨーク市内に数多くの住宅を建設するなどして短期間で会社を急成長させた。政財界の重要人物との人脈も広かった。
その一方、家庭のことは妻のメアリー・アンに任せきりの亭主関白でもあった。“育児は女がやるのが当たり前。自分にとって重要なのは家庭より仕事。だが、家族のことはすべて自分の一存で決める”という考えを持つ父親だったという。
幼い頃のドナルドが育ったのは、そんな父親に独裁的に「支配」された家庭だった。
「フレッドは悩みも苦しみも持ち合わせない人格でした。人間らしい“生の感情”は持たず、親としても夫としても厳格で融通が利かない。彼にとっては“弱さこそ最大の罪”。加えて、“女は生まれつき男より劣っているもの”と決めつける性差別主義者。彼が関心を持っているのは、成功しつつあるビジネスの行方だけでした」(メアリー・以下同)