さてもう一人、「W松本効果」として片棒を担いでいるのが松本穂香さんです。竜一・竜二と血のつながらない妹の吉江美佐を演じ、こちらも実にぴったりのハマリ役。事情を何も知らない純朴な美佐は、竜一にあわい恋心を抱いている。しかし、少しずつ残酷な現実を知ることになり、美佐は混乱し疑念にまみれていく。
そう、こちらはまゆみとは逆のベクトルで「純粋」「無垢」な存在から、「苦悩」し「屈折」へと変化していく。このW松本の対峙ぶりがいい。二人の違いがくっきりと出る演技・演出が効いています。
加えて、個人的には玉木宏さんの底なしの暗さにもつい目がいってしまうのです。なぜなら玉木さんといえば今、新婚ホヤホヤで8月に妻・木南晴夏さんが第1子を出産したばかり。つまり、幸せの絶頂にいる人が、こうも暗い演技を見せてくれるとは。その役者魂に脱帽です。力技ゆえか、10月主演のドラマ『極主夫道』(日本テレビ系日曜午後10時30分)でも、スネに傷を持つ元極道役を演じることになりました。
ついでに、まゆみ役の松本まりかさんはちょうどこの時期、別のドラマでまったく違う役に挑戦中です。『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系土曜午後11時15分)では「四谷怪談」のお岩さんがモデルとなった四谷伊和を演じていて、こちらも出色の出来。スレンダーな柳腰、面長、長い髪は日本の幽霊イメージの元祖とされる円山応挙の幽霊画を彷彿とさせます。伊和は怒ると怖くて色っぽくて主人公には優しい。眼帯をつけた着物姿につんと突き出した唇、独特の甘い声。コメディドラマにもすんなりと溶け込んでノリノリの幽霊ぶりを見せています。
そう、役者は化ける商売です。毎回、いかに違う人物になりきるのか。とことん成りきって視聴者を納得させてくれるか。大森南朋さんがものすごくいい人になってブレイクしたのと同様に、職人たちの演技の技と幅を今週も堪能したいと思います。