出演者アンケートがあり、終戦時の気持を俳優たちが答えている。阿南陸相役の三船敏郎「快哉を叫んだ」は役柄とは大違い。鈴木貫太郎首相役の笠智衆「玉音にタダ涙」と、厚木航空隊の菅原中佐役の平田昭彦「徹底抗戦」は役柄にピッタリだ。加東大介の「死んだ大勢の戦友のことを考えさせられた」には、加東が小津映画「早春」で演じた戦友会での酔っ払いを思い出させる。
徳川夢声や渥美清の回想時期によるちょっとの違いにも著者は敏感に反応する。黒澤映画の名脇役・宮口精二は自ら主宰する雑誌で終戦日アンケートをする熱心さなのに、自身のその日の記憶は「未整理のまま」に亡くなる。その余白を受けとめることも大事だろう。
巻末の人名索引から興味のある役者のページに入っていくのも一興で、発見があること請け合いだ。
※週刊ポスト2020年9月18・25日号