トランプファミリーの面々。右から長女マリアン、父フレッド、母メアリー・アン・トランプ、次男ドナルド、次女エリザベス、三男ロバート(写真/ZUMA Press/AFLO)
トランプ大統領が根拠なく「自分のほうがよく知っている」と虚勢を張る姿は、ツイッターなどでもお馴染みだ。メアリーによれば、彼は国政に関する知識基盤が脆弱であるがゆえに、その不安をごまかすように「自分はなんでも知っている」と主張する。新型コロナ対策にもそんな面があっただけに、「これこそ、私たちがいま直面している問題なのである」という彼女の言葉に頷く米国人は多いだろう。
2018年、ニューヨーク・タイムズがトランプ一族の資産に関する調査報道を行ない、ピュリッツァー賞を受賞した。賞の選考委員会は「自力で財産を築いたとする同氏(ドナルド)の主張の虚偽を暴き、税金逃れをくり返したビジネス帝国の姿を明らかにした」と説明している。この調査に協力し、一族の資産に関する文書を提供したのがメアリー・トランプ氏だった。
そんな醜聞にまみれながらも、ドナルドは2期目を目指して大統領選挙に臨む。だからこそメアリーは本書の執筆を決意した。彼女は高濱賛氏による本誌のインタビューにこう語った。
「ドナルドが大統領執務室にさらに4年間も居残ったら、それはアメリカ民主主義の終焉を意味するだけではありません。それと同時に、世界の同盟国も荒廃させてしまいます」
日本人にとっても、11月の米国大統領選挙は他人事ではない。
文■岡田仁志
※週刊ポスト2020年10月2日号