血液採取による検査以外の選択肢もある。
「患者さんが自宅で採取した痰を検査することで肺がんのリスクを調べることができます」
そう語るのはGME医学検査研究所の臨床検査技師・若林泰史氏だ。
「喀痰細胞診と呼ばれる検査です。起床してすぐの痰を専用容器に採取、3日分を郵送していただき、痰の中にがん細胞がないかを検査するものです。肺がんのなかでも特に脊柱や心臓に隠れて胸部レントゲンに写りにくい『扁平上皮がん』などの早期発見に有効です」
返送してから3~4日で出る検査結果は、電話での通知、書面の郵送、インターネットでの通知の3つから選択できる。
家庭で数値などが計測できる装置を使う方法もある。その一例が家庭用の心電図計測器だ。片手に収まるサイズの携帯型心電計を開発したオムロンヘルスケア担当者の説明。
「医療機器認証を取得しているので、医療の現場で実際に使えるレベルの精度が担保されています。実際に医療機関でも貸し出しといったかたちで使用されています」
機器を胸部の素肌に当ててスイッチを押すと、結果はすぐに表示される。
「医師でない者が結果を判断するのは医師法で禁じられているため、疑われる病名を表示させるといったことはできません。異常がみられた場合には“拍動が一定ではありません”などの表示になります。これらを参考にして利用者が医療機関に行くかを判断することになる」
詳細な検査が必要かどうか、病院に行かなくてもその場でチェックできるのだ。
往診でレントゲン
さらに、一定の条件を満たせば、自宅にいながらにして医師による専門機材を使った検査を受けられるケースもある。訪問診療を行なう心越クリニック岩間洋亮院長がこう話す。
「通院困難な人に対しては私たち訪問医が自宅に往診することができます。対象は寝たきりなどに限らず、『腰痛や膝痛で病院に通うのが難しくなってきた』『最近転ぶことが増えてきた感じがする』といったケースまで含めて相談に応じます。
往診の際に『動悸がする』などの症状があれば原因を探るために心電図などの検査を行ないます。機材は持ち運びできる医療用のものが普及していますので、患者さんの自宅で計測可能です」