国際情報

最高裁判事の後任指名でトランプがバイデンを押しまくる

アメリカの良心の死が大統領選挙を揺らしている(AFP=時事)

 9月18日、アメリカ最高裁のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事がすい臓がんのため死去した。享年87。リベラル派の象徴的な存在で、最高裁判事を務めた27年間、一貫して女性やマイノリティの権利擁護に奮闘した。「RBG」の愛称で、アメリカ人なら誰もが知る存在だった。大統領選挙が佳境に入った折も折、その後任問題が大きな関心を集める。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。

 * * *
 ギンズバーグ氏は史上2人目の最高裁女性判事で、女性やマイノリティの権利を強力に擁護した。どんな政権でも、どんな世相でも、高いインテリジェンスと品格に満ちたブレない人格者であり、アメリカ中から尊敬の念を集めていた。

 ハーバード・ロー・スクールを卒業後、幼い子供がいたという理由で弁護士事務所に採用されず就職に苦労したという。そんな経験もあり、弁護士として、そして後に裁判官として、アメリカを代表するフェミニストの一人であり続けた。

 現在の最高裁は長官を含む9人の判事のうち保守派が5人で多数を占めている。最高裁判事の任期は終身。トランプ大統領はこれまですでに、保守派判事2人を最高裁に送り込んでいる。リベラル派のギンズバーグ判事の後任が保守派になった場合、判事の構成は6対3で圧倒的に保守寄りになる。そのような不均衡は極めて異例である。トランプ氏は自分の任期中に後任を指名すると意気込んでおり、民主党が押し切られれば、大統領選挙の結果に関係なく、長きにわたってアメリカの司法判断は大きく保守に傾く。バイデン氏は、後継指名は新政権が行うべきだと主張するが、今のところあまり効果的な反論になっていない。

 ギンズバーグ氏が亡くなった翌日、トランプ氏はノースカロライナ州に大統領選キャンペーンのために出かけた。主催者発表で3万2000人の聴衆が詰めかけた演説会場に姿を見せる前、トランプ氏はギンズバーグ氏の死に哀悼の意を表していた。いかに言動がめちゃくちゃなトランプ氏でも、同判事に尊敬の念を示したことは正しい。しかしながら、後任を9月20日からの週にも指名し、「手続きは非常に早く進む」と宣言したことは、司法を支配しようとする間違った意欲がにじみ出ていると感じさせた。

関連記事

トピックス

手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
『国宝』に出演する横浜流星(左)と吉沢亮
大ヒット映画『国宝』、劇中の濃密な描写は実在する? 隠し子、名跡継承、借金…もっと面白く楽しむための歌舞伎“元ネタ”事件簿
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン
山本アナ
「一石を投じたな…」参政党の“日本人ファースト”に対するTBS・山本恵里伽アナの発言はなぜ炎上したのか【フィフィ氏が指摘】
NEWSポストセブン
今年の夏ドラマは嵐のメンバーの主演作が揃っている
《嵐の夏がやってきた!》相葉雅紀、櫻井翔、松本潤の主演ドラマがスタート ラストスパートと言わんばかりに精力的に活動する嵐のメンバーたち、後輩との絡みも積極的に
女性セブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン